編集者はツラいよ……。ライティングコーチが編集者とライターを一挙に救う!?

編集者はツラいよ……。ライティングコーチが編集者とライターを一挙に救う!?

日本の編集者は「なんでも屋」?

編集者と有名作家の〆切にまつわる攻防を綴った書籍『〆切本』(左右社)については、以前PENYAでも「拝啓ライター様。名著『〆切本』は絶対に読まないでください」で紹介されています。この記事からも分かる通り、編集者は単に企画内容をライターに伝え、原稿を依頼して終わりじゃありません。

決めたスケジュールを守ってもらうように催促したり、筆が進まないライターのモチベーションを上げるためにあれこれ画策してみたり。なんとか原稿を受け取るまでが仕事なんです。かつては、引越しや冠婚葬祭のお手伝いをすることだって「仕事」のうちと思われていた時代も……。

1人で何役もこなしている日本の編集者ってなかなか大変ですよね。でも、海外に目を向けてみると同じ状況なのでしょうか?

海外ではライター向けの「コーチ」が存在する

欧米では、編集者とは別に「ライティングコーチ」がライターと関わることがあります。特に書籍出版をしようとしている人にとって執筆は大掛かりな作業なので、「コーチング」という仕事にニーズがあるようです。

ライティングコーチが具体的にどんなことをしているかというと、

  • 魅力的で読まれる本を書くための構想
  • 想像力を豊かにするためのトレーニング
  • 執筆スケジュールの作成、執筆ペースの維持
  • 筆が進まない問題の解消(内面的な問題が妨げになっていることがある)

などをサポートします。執筆という大きな目標を達成するために、メンタル面と行動面の両方から最後まで伴走してくれる心強い存在です。

編集者との違いとしては、編集者は自分が担当する書籍の出版や記事の掲載をすることが最終目的ですので、その目的に基いてライターと関わっていきます。一方、ライティングコーチはコミュニケーションの知見を持ったプロが、純粋にライターが執筆するということ自体に対して第三者的な視点からサポートをしていきます。もっとも、導いていくためには執筆に関する専門性も必要ですので、一般的には出版業界出身か著者であるコーチが多いようです。

ちなみに「コーチ」と聞くとスポーツで指導してくれる人を思い浮かべるかもしれませんが、ビジネスの世界で浸透しつつある「コーチング」はちょっと異なります。「やり方を教えるのではなく、自分自身で考え行動するのを引き出す」のがコーチングなのです。

したがって、出版コンサルタントのように単に売れる本の書き方を教えたり、出版社との引合せを行ったりするわけではありません。「なぜ本を書きたいのか? 今までどんな経験をしてきたのか? その裏側にある想いは?」といった根本的な問いを起点に、実際のライティングを支えていきます。

「出版したい!」という想いを夢で終わらせない

日本で書籍1冊を執筆するのに10万文字程度、原稿用紙で300枚程度必要と言われています。仮に原稿用紙1枚ずつ書いていったら1年近くかかります。あまりに高い壁を目の前にすると、せっかくの意欲がしぼんでしまいそうです。

「今まで自分がやってきた集大成を本にして出版してみたいけど、出版したことないからどう取り組んだ良いからわからない」。そんな大きなチャレンジに対して一緒に取り組んでくれるのがライティングコーチです。

例えば「Bring Your Book to Life®」という独自のメソッドを持つアメリカのライティングコーチLisa Tenerさん。彼女自身も書籍の出版経験があり、現在は個別のコーチングだけでなく、ハーバード・メディカルスクールの出版プログラムなどでワークショップも実施しています。

彼女の元には医学博士・コンサルタント・経営者などさまざまな出版希望者が集まってきており、実際に出版に至った方も沢山いるようです。

コーチングの力を借りてライターとしてのキャリア設計を

出版や記事掲載の〆切を守るため、本来の業務範囲を超えて、ある意味片手間でライターに対して手厚くフォローしてきた日本の編集者。もしライティングもコミュニケーションも熟知したコーチが間に入ることで、ライターが自律的に執筆できるようになったら、編集者の負担も減ってくるかもしれませんね。

またライターにとってもライティングコーチをつけることで、書籍や記事を通して伝えたい内容が明確になり、モチベーションが上がってスムーズに執筆できるといったメリットが出てくると思います。

日本でも終身雇用制度が徐々に崩壊し、個人で働くという選択肢が増えてきています。これからライターとしてどんな仕事をしていくのか、自律的なキャリア設計を行っていくためにも、コーチングの力を借りて、自分がやってきたことを棚卸しして強みを再認識することが大事になってくると思います。

 

著者プロフィール

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大津達朗
大手コンサル、人材系ベンチャーを経た後、プロコーチとしてリーダー人材の中長期的なキャリアサポートを行う傍ら、海外HR事情やコーチング関係のライティングを行っています。「人や組織の本質的な変化・成長を応援したい!」という想いを持って活動しています。

 

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