これを知らなきゃプロじゃない!著作権の基本

これを知らなきゃプロじゃない!著作権の基本

編集者の立場から見て、もっとも付き合いにくいライターはどんなタイプだと思いますか? 文の下手な人ではありません(もちろんうまいに越したことありません!)。いちばん困るのは、平気で「コピペ」をする人、つまり著作権に鈍感な人です。

とはいえ、とくウェブメディアの著作権については「グレー」な部分もあり、フリーのライターになりたての人には、わかりにくいかもしれません。本気でプロを目指すなら、ぜひ知っておきたい著作権の基本を押さえておきましょう。

「コピペ」と著作権

原稿の発注を受けたとき、関連しそうなサイトをパパっと見て、おもしろそうな部分を器用につなぎあわせて一丁上がり! こんなつくり方をした記事は、当然ながら著作権に抵触する可能性が濃厚です。オンライン上にある文章の多くのは「著作物」にあたるため、無断でコピペするのは厳禁です。

著作物とは、文芸、学術、美術、音楽などの分野で、人間の思想や感情を創作的に表現したもの。これを保護する権利が「著作権」です。

おそらく、仮にもライターを生業にしているなら、コピペをしても問題ないと思っている人はいないでしょう。とくにウェブメディアの場合、どこの編集部でも何らかのコピペ判定ツールを使ったチェック体制を敷いています。万一、気付かれないだろうと思って安易にコピペをしても簡単にバレてしまいます。

丸写しじゃなければOK!?

ここで注意してほしいのは、「文を丸ごとコピペしなければOK!」というわけでは決してないことです。たとえば、あるサイトの文章を「てにをは」を変えて流用し、あたかも自分の考えのように書いてしまった場合も完全にNGです。

もちろん、書こうとしているテーマに関連して、誰がどんな意見を述べているのか、どんな事実があるのかリサーチすることは必要です。
ただし、それは「パクれる」テキストを探すためではありません。テーマの切り口や視点を探るための準備段階に過ぎません。

他人の文章を自分の記事に使い場合、正当な範囲内で「引用」することはできます。自分の言葉による「地の文」がメインで、それを補強するためや具体例を示すために、サブとして引用するならOKです。が、長々と引用して、自分のコメントひと言加えるだけでは「引用」とは言えません。さらに、地の文と引用箇所を区別するために「 」をつけ、引用元を明記する必要があるのは言うまでもありません。

裏取りを怠ると命取り

コピペが許されないのは、単に著作権法で禁止されているからだけではありません。元ネタが正しいとは限らないため、余計にリスキーなのです。

誰も知っているようなニュースサイトなら、ある程度は信頼できるでしょうが、それでも誤報がゼロではありません。その場合、「訂正記事」が出ることもありますが、最初の記事だけ見て訂正記事に気づかなければ、間違った情報を元に原稿を書くことになってしまいます。

ではどうすればいいのか? 最低限必要なのは「裏取り」です。できるだけ情報の上流までさかのぼることです。

最初に見たサイトが、まとめサイトやバイラルメディアであれば、初出のサイトを探すのは当然です。広く話題になった話であれば、複数のメディアが違う切り口で取り上げている可能性も高いので、読み比べることで、そのテーマへの理解が深まります。

さらに、元のニュースソースにも何らかの取材元があり、きちんとした記事であれば、文中で情報源を示しています。ビジネスのニュースであれば、取り上げられている企業のニュースリリースで関連情報を探せる可能性があります。法律や政策に関するニュースなら、担当省庁のサイトを見れば、より詳しい情報が見つかります。

こうした裏取りを怠り、いい加減な原稿を納品してしまうようなことになれば、一気にライターとしての信用を失ってしまうでしょう。

まとめ

裏取りを兼ねつつ複数の情報源をあたりながら、独自の切り口を見つけ、いかにオリジナリティのあるコンテンツを生み出すか。ここにライターの力量がかかっています。また、そこにこそライター稼業のおもしろさがあるはずです。著作権を無視したコピペをしないだけでなく、こうした姿勢で取り組むライターなら、編集者も安心して任せることができます。

 

著者プロフィール

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小島和子
フリーランスで編集・執筆・出版プロデュースを手がける。最初に勤めた出版社では、語学書や旅行記など、異文化にまつわる書籍の編集を担当。環境をテーマにした本づくりをきっかけにキャリアチェンジし、政府系機関やNGOで環境問題に関する情報発信に携わるなど、出版業界以外の経験も豊富。近ごろは東北復興の取材で現地に足を運ぶ機会も。分担執筆した著書に『つながるいのち―生物多様性からのメッセージ』がある。

 

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