高いものほど「安く売れ」フロントエンド商品を使った集客法

お客様のためを思って本当に品質の良い商品を開発したからと言って、すぐに売れないことが多くあります。お金と時間をかけて作り上げたものにもかかわらず、なぜお客様が集まらないのでしょうか。
その理由のひとつとして、お客様に心理的負担や過剰なリスクを負わせていることが挙げられます。このような心理的ハードルを低くして、集客力を高める手法として「フロントエンド商品」を活用する方法があります。この記事では基本的なマーケティング手法としての「フロントエンド商品」と、フロントエンド商品と合わせて用いる「バックエンド商品」について解説します。

「フロントエンド商品」「バックエンド商品」とは

街を歩いている時や、インターネットを見ている時、さまざまな広告やキャンペーンと呼ばれるものを見聞きします。
その多くは、割安な価格設定で商品を試すことができたり、場合によっては「体験版」という名目でサービスや製品を無料で使ったりすることができます。このように、割安な価格で利用できる、足掛かりとなる商品を「フロントエンド商品」と呼びます。一見すると「赤字覚悟」に見えますが、これは「フロントエンド商品」を活用したマーケティング手法です。
そしてフロントエンド商品には、必ず「バックエンド商品」がセットになっています。バックエンド商品とは「利益を十分に得ることができる、売り手が本命にしている商品」を指します。フロントエンド商品より質を高めたものや、体験版の継続使用などがバックエンド商品に当たります。

人は価値の分からないものを買うとき慎重になる

では、なぜフロントエンド商品とバックエンド商品に分ける必要があるのでしょうか。それは人の購買活動に対する心理に理由があります。

選択しなかった方の利益を推測する「機会費用」

人は生きるうえで、さまざまな選択を行っています。人は選択しなかった方を仮に選んだ場合、どの程度の利益やメリットがあるのかを推測します。このような得ることができなかった利益を「機会費用(損失)」と言います。これは商品を購入するときにも同じ心理が働きます。したがって商品を買ってもらうには、買わないことによるメリットを上回る価値を感じさせる必要があります。

できるだけ損することを避けようとする「プロスペクト理論」

人が意思決定をするうえでの心理行動理論に、「プロスペクト理論」と言うものがあります。プロスペクト理論とは「人は利益に対しては確実性を重視し、損失に対しては最大限に回避することを重視する」と言うものです。
たとえば、以下のような選択に迫られた時、皆さんはどちらを選ぶでしょうか。

A.100%の確率で90万円を得られる
B.90%の確率で100万円を得られる

この選択肢、実はどちらを選んでも期待値(1回の行動で得られる数値の平均値)は90万円と同じです。ところが多くの人はAを選択します。なぜなら、人は損する可能性があるものにはできるだけ手を出したくないと考えるからです。したがって人は商品を買うとき、少しでも「損をする可能性」を感じていると購買意欲が大幅に低下します。
つまり、開発した商品がどれほど優れていたしても、使ったことのない多くの人にとっては「損をする可能性」を感じずにはいられないのです。

損失可能性をできるだけ低くしながら価値をアピールするフロントエンド商品

人は購買の価値を理解しなければ買わないこと、損をすることを避けることが分かりました。それでも商品を買ってもらうためにはどうすれば良いのでしょうか。それは「損をする可能性や程度をできるだけ低くしつつ価値を体感してもらう」ことです。
たとえば、損をしても痛くない程度の金額の商品であれば、新しいものを気軽に試す人がいます。また、無料体験版であれば試しに使う人が増え、購入候補として検討される可能性が高くなります。これらの例は、フロントエンド商品の手法そのものです。集客で本当に大切なことは、商品に関心を持つ「見込客」を集めることです。見込客を集める手段としてフロンドエンド商品は大きな力を発揮するのです。

フロントエンド商品とバックエンド商品の関連性を持たせることが必要

このマーケティング手法を行ううえで注意点があります。それは「バックエンド商品はフロントエンド商品と関連性を持たせる必要がある」ということです。当然ですが、フロントエンド商品だけでは利益を十分に得られないので、フロントエンド商品を購入したお客様の中から、バックエンド商品を買ってもらう必要があります。したがってバックエンド商品はフロントエンド商品で得られる価値をさらに多く得られるものでなければいけません。

フロントエンド商品の失敗事例・成功事例

ではここで、フロントエンド商品に関する事例を見てみましょう。近年街中でもよくある「整体サロン」業界は興味を持つ方が多い割に、相場がはっきりせず割高感を持たれています。そのような整体業界ではどのようなフロントエンド商品が使えるのでしょうか。

失敗事例:腕は一流なのに新規の顧客が集まらなかった整体サロン

カイロプラクティックの大学で正式な資格を得るまで勉強した整体師が、地元の乗換駅の近くでテナントを借りて整体サロンを開業しました。腕の良さは既存の顧客や業界人の間では知られていました。彼も集客の必要性を感じていたので、ポスティングやタウン誌への掲載を行いました。
しかし、彼の腕の良さを知らない新規の顧客にとっては、広告を見たところでどの程度の効果があるかは伝わりにくかったため、集客がスムーズに進まず、結局店を閉めざるを得なくなったのです。

成功事例:格安の体操教室で見込客を集めた整体サロン

一方で、別の整体師は自分の店を開く前に地域のスポーツクラブとある交渉をしました。それは「シニア世代向けの体操教室の定期開催」でした。体操教室であれば、地域の方たちの関心も高く価格も割安に設定できるので徐々に集客することができました。その整体師は体操教室を「フロントエンド商品」と位置づけ、体操教室でお客様の身体に関する個別相談を受けながら自分の整体サロンでの施術を勧めていきました。このようにしてバックエンド商品の購入者を徐々に増やしていったのです。

まとめ

フロントエンド商品は、お客様とつながるきっかけとして非常に大切なものです。お客様にお金を払ってもらううえで「損はさせない」ことを十分に理解してもらうためには、商品の良さを少しずつ理解してもらう必要があります。

参考:

 

著者プロフィール

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福井廉太
経済・経営と医療・健康分野に強いウェブライター。2000年に理学療法士、2009年にMBAの資格を取得。
ビジネスや株式投資に関するコラム記事連載の他、英文翻訳も手掛けている。
現在ライターの他、理学療法士、体操教室のインストラクター、そして整体サロンのセラピストと多岐にわたる仕事をこなしている。

 

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