TECHNIQUE
「漢字をひらく」とは?記事を読みやすくブラッシュアップする方法を解説
文章に含まれる漢字の割合は、読者が持つ記事の第一印象に大きく影響を与えます。漢字が多すぎる文章は難しそうに見えるため、それだけで読者に敬遠されがちです。
今回の記事では、文章の難解な雰囲気をやわらげてくれるテクニック「漢字をひらく」を解説します。
「漢字をひらく」とは
「漢字をひらく」とは、漢字表記の単語をひらがなで書くこと。一方、ひらがな表記を漢字にする場合は「漢字を閉じる」といいます。
(例)奮ってご参加下さい → ふるってご参加ください
この例では、「奮って」「下さい」をひらきました。漢字をひらくことで、もともとの硬くかしこまった印象が、平易で穏やかな印象に変わります。
こうした印象の変化を利用し、読者層や文章の目的に応じて、「ひらく/閉じる」を意図的に使い分けるというテクニックもあります。
漢字をひらくメリット
漢字をひらくことには、いくつかのメリットがあります。
ここでは「読みやすさ」「名詞の区別」「雰囲気の調整」の3つを見ていきましょう。
記事が読みやすく見える
記事を読むとき、読者は文字を目で追います。
漢字が多いと視線が止まりがちになり、読みにくいと思われてしまうおそれがあります。
(例)秋刀魚の塩焼きと葱の味噌汁→さんまの塩焼きとねぎのみそ汁
この例では、「秋刀魚」「葱」「味噌」をひらきました。漢字が減ったことで、読者の視線がスムーズに流れ、読みやすくなっています。このように、快適に読める文章を書くためには「漢字をひらく」テクニックが欠かせません。
実質名詞と形式名詞を区別しやすい
名詞には「実質名詞」と「形式名詞」があります。
- 実質名詞…具体的に存在する物や概念を表す名詞。その単語を単独で使用できる
(例)鳥、愛、所、上、事 - 形式名詞…実質的な意味を持たない名詞。単独では意味をなさず、単語の補助として使用する
(例)はず、つもり、ところ、うえ、こと
一般的に、形式名詞はひらがなで表記されます。
「所/ところ」「事/こと」などの単語でも、漢字をひらけば、形式名詞だとすぐに区別しやすくなります。
雰囲気を調整しやすい
ひらがなには「やわらかい、簡単」、漢字には「硬い、難しい」というイメージがあります。
そのため、漢字をひらくことで、文章全体の硬い雰囲気を和らげることができます。
(例)長靴を履いて歩いた → 長ぐつをはいて歩いた
「長靴」「履いて」をひらいたことで、軽やかな足取りをイメージさせ、文章全体をやわらかい印象に変えられます。
ひらく漢字の例
ここでは、「ひらく漢字」の代表的な例を品詞ごとに紹介します。「閉じる漢字」の例も合わせて紹介しますので、参考してください。
品詞 |
ひらく漢字の例 |
閉じる漢字の例 |
代名詞 |
あなた、これ、どこ、どちら、みんな |
私、彼、彼女、自分 |
接続詞 |
あるいは、および、ただし、たとえば |
併せて、従って、一方、要は、次に |
形式名詞 |
こと、とき、ところ、もの、なか、うえ |
事、時、所、物、中、上 |
副詞 |
しばらく、かえって、じかに、ぜひ |
重ねて、幸いに、奮って、全く、少々 |
漢字をひらくときのポイント
漢字をひらくときは、気をつけるべきポイントがあります。
ここでは「表記ゆれ」「レギュレーション」「漢字とひらがなのバランス」の3つについて見ていきましょう。
表記ゆれに気を付ける
ひとつの記事のなかで、同じ意味を持つ単語の表記が2種類以上あることを「表記ゆれ」といいます。
漢字をひらくと、表記ゆれが起きやすいので注意が必要です。
(例)彼が行ってきたのは懐かしい森。彼女が行って来たのはなつかしい街だった。
この例では、「行ってきた/行って来た」「懐かしい/なつかしい」が表記ゆれになっています。
表記ゆれがある記事は読みにくく、読者の混乱を招きます。表記ゆれを防ぐには、「ひらく/閉じる」の基準をしっかりと決めておくことが大切です。共同通信社「記者ハンドブック」といった書籍や購読している新聞の表記などを参考にするといいでしょう。
レギュレーションに従う
記事を書く際、クライアントからレギュレーション(記事執筆のガイドライン)が出ている場合は、そのルールに従います。
特に接続詞や連体詞は、「ひらく/閉じる」の判断が分かれやすい部分です。レギュレーションはメディアの記事に一貫性を持たせ、クオリティを保つために重要なもの。しっかりと確認しましょう。
漢字とひらがなのバランスに気をつける
通説ですが、文字数における理想的な漢字の割合は、20~30%とされています。
- 「兎は人参を好むと言われるが、実際は橙色の根より緑色の葉を好む傾向に有る」
漢字50%:ひらがな50% - 「兎は人参を好むといわれるが、実はだいだい色の根よりみどり色の葉が好きな傾向にある」
漢字30%:ひらがな70% - 「うさぎは人参が好きだといわれるが、じつはオレンジ色の根より緑の葉っぱが好きらしい」
漢字20%:ひらがな70%:カタカナ10%
1では、漢字の割合が50%もあり、すらすら読める文章とは言えないでしょう。2、3のように、漢字の割合を20~30%まで抑えると、読者の視線がスムーズに流れ、読みやすくなります。
漢字をひらいて読みやすい文章を書こう
漢字をひらくことで、文章を読みやすくしたり、雰囲気を調整したりすることが可能です。クライアントのレギュレーションを守りながら、漢字をひらくテクニックを柔軟に使い、読みやすい文章を執筆することを目指しましょう。「ひらく/閉じる」の判断には、あらかじめ自身の基準を定めておくことをおすすめします。表記ゆれを防ぎ、文章の一貫性を維持できます。
著者プロフィール
- さわきゆり
- 人見知りをまったくしないフリーライター。誰かの「必要」に応える記事を紡ぎます。バイクでの旅とサッカー観戦が大好きです。X:@yuri_sawaki