ライターも会社を作ったほうがいいの?法人化のメリットとデメリット

ライターの仕事が軌道に乗ってくると、「会社を作ったほうがいいのかな?」という考えが頭をよぎることもありますよね。でも、法人化(法人成り)することで、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

※本記事は、一般的な内容をまとめたものです。また、すべてのメリット・デメリットをご紹介しているわけではありません。法人化するべきかどうかは個別のケースにより異なりますので、本格的に法人化を考えるなら、税理士をはじめとする専門家に相談しましょう。

※税金・制度に関しては、平成27年11月現在の情報をもとに執筆しています。制度が改正されることもあるので、ご注意ください。

法人化するメリット

個人事業主のほうが有利か、法人化したほうが有利なのかはケースバイケースですが、法人化したほうが一般的に「信用があがる」というメリットがあります。

また、一定以上の収入があれば、個人事業主より節税できるケースも。税金に関するメリットをいくつか見ていきましょう。

給与所得控除が受けられる

一般的に、最も注目されるのが「給与所得控除」。法人化すると、自分に給与を支払うことになり、給与所得控除が受けられます。

個人事業の場合は、収入から経費を除いた所得から、さらに控除を差し引いた額が課税対象ですよね。代表的な控除は「青色申告特別控除」で、最大65万円。しかし、収入がどれだけ増えても控除額は変わりません。

一方、給与所得控除は、収入に応じて控除額が増えていきます(※1)。2つ例を挙げてみましょう。

【700万円給与収入がある場合】(「収入金額×10%+120万円」の計算式(※2)を使う)
700万円×10%+120万円=控除額:190万円
【1,200万円給与収入がある場合】(「収入金額×5%+170万円」の計算式(※2)を使う)1,200万円×5%+170万円=控除額:230万円

課税所得が多い人にとっては、この給与所得控除の恩恵は魅力的にうつるかもしれませんね。

※1 ただし、上限額があります(平成27年分までは245万円、平成28年分は230万円、平成29年分は220万円と段階的に引き下げられていく)。
※2 上記の計算式は、平成27年分までのものです。

繰越控除の期間が長い

個人事業主が青色申告をする場合、向こう3年間「純損失の繰越控除」ができるというありがたい制度があります。ちょっと難しい言葉ですが、要は赤字が出ても3年間までなら黒字と相殺できる、ということ。

たとえば今年500万円赤字を出してしまい、それを申告したとします。その後3年間コンスタントに200万円の所得があったとすると、単純化すれば次のようになるのです。
1年後:200万円の所得→赤字分の500万円のうち、200万円を充当して相殺(所得税なし)
2年後:200万円の所得→残りの赤字分300万円のうち、200万円を充当して相殺(所得税なし)
3年後:200万円の所得→赤字分の残り100万円分相殺し、残りの所得100万円に対して所得税がかかる

この繰越控除の期間が、法人の場合は9年間と個人事業主より長く設定されています。さらに、平成29年4月以降に開始した事業年度で生じた赤字については、10年に延長されることになっているのです。
※資本金が1億円を超えるような大企業の場合は、繰越控除額に制限があります。

2期分、消費税の免税業者でいられる

個人事業主の売上(税込)が1,000万円を超えると、2年後から「消費税課税事業者」になり、消費税を納める義務が発生します。自分が「もらった消費税」と「払った消費税」との差額分を納税することになるのです。

たとえば、1年間の原稿料が税込1,080万円だったとします。そして、経費として税込108万円使ったなら、次のようになります。

もらった消費税(仮受消費税)80万円-払った消費税(仮払消費税)8万円=72万円(納税する消費税)

※源泉徴収や手数料等は考慮していません。また、実際の経費のなかには消費税がかからないものもあります。

こちらも、収入が多ければ多いほどインパクトが大きいですね。しかし、新たに法人を設立すると、仮に個人事業主のときに消費税課税事業者になることが決定していても、リセットされてまた2期分は免税業者でいることができるのです。ただし、資本金1,000万円以上といった条件にあてはまる場合は、納税の義務があるのでご注意を。

法人化するデメリット

法人化も、いいことばかりではありません。今までかからなかった税金や資金が必要になり、ルールも変わってきます。代表的なデメリットを挙げていきましょう。

これまでにない出費がある

たとえば、下記のような出費があります。

  • 設立費用・資本金

法人を設立するに当たっては、登録免許税や収入印紙代、定款認証手数料といった手続きの費用がかかります。仮にすべて自分で手続きしたとして、25万円程度が目安(株式会社の場合)。もし専門家に手伝ってもらうなら、報酬額もプラスされます。

また、資本金も必要です。ひとつの目安として、半年程度収入がなくてもやっていけるくらい用意しておくと安心でしょう。具体的な額は専門家に相談するのがベスト。なお、資本金が1,000万円未満か1,000万円以上かで、消費税の納税義務の有無や後述の法人住民税の額が変わりますので、注意が必要です。

  • 赤字でも払う法人住民税の均等割

法人の場合には、法人税、法人住民税、法人事業税といった税金がかかります。個人事業では赤字なら税金が発生しませんが、法人の場合は、赤字でも「法人住民税の均等割」の部分は支払わなくてはいけません。たとえば、東京都特別区内に事務所があり、資本金1,000万円以下で従業員50人以下の法人なら、年間7万円です。

また、消費税課税事業者なら、赤字でも売り上げた際に預かっている消費税の納税義務があることも忘れてはいけません。

  • 社会保険料

法人は、基本的には健康保険と厚生年金保険への加入が義務付けられていますので、その費用も見込んでおく必要があります。

  • 税理士依頼費用

法人税の確定申告は、一般的に難しいと言われており、税金の素人が一人でおこなうのは大変です。税理士に依頼する場合、条件によって金額は大きく変わりますが、小規模な法人でも10~20万円以上は見込んでおく必要があります。

計画が狂うと思わぬ出費も

法人化すれば自分に給与を支払うことになりますが、役員報酬を変更できるのは、原則期首の3か月以内と決まっています。それ以降に売上が予想以上に増えた場合、うれしい反面、法人税が増加することに……。もちろん、反対に売上が減るのも困りますし、計画に基づいてしっかり事業の見通しを立てないといけないのです。

安定した収入がないと法人化は難しい

「いくら稼いでいれば法人化していいのか」という点については、個別の条件によっても異なるため、専門家である税理士でも意見が分かれるところです。「700万円~800万円あれば」という人もいれば「1,000万円ないと」という人も。ある程度収入が増えてくるとさまざまな面で魅力的な法人化ですが、たとえ赤字であっても必ず払わなくてはいけない費用があることを考えると、安定した収入がないと厳しいと言えるでしょう。また、設立してから廃業しようと思っても、ある程度パワーとコストがかかります。

なかには無料相談をおこなっている税理士事務所もあります。法人化を迷っているのであれば、一度相談してみてはいかがでしょうか


参考

 

著者プロフィール

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藤澤佳子
リクルート『SUUMO新築マンション』編集部を経て、現在はフリーランスのライター・エディター。過去の経験と保育士、ファイナンシャルプランナーの資格を活かし、主に住宅・金融・教育関係の執筆&編集活動を行う。私生活では2児の母。趣味は断捨離とコントラバス演奏。

 

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