口臭ケア、ミントで隠す前に。まず見るべき口の中の3か所

口臭ケア、ミントで隠す前に。まず見るべき口の中の3か所

打ち合わせの前に、ミントのタブレットをこっそり2粒。
わかります、私のかばんにも必ず入っています。
口腔ケアアドバイザーで歯科衛生士の柚木葉子です。

ただ、ミントはにおいの上から香りをかぶせているだけで、元はお口の中に残ったままです。
見てほしいのは、舌の奥、歯と歯ぐきの境目、そしてお口の乾きの3か所です。
この記事では、それぞれの確かめ方と、隠すかわりにできる小さな掃除をお伝えします。

ミントで隠しても、口臭が戻ってくる理由

ミントは「香水」、においの元は残ったまま

生ゴミのにおいが気になるとき、ゴミ箱に芳香剤をシュッとかけても、しばらくするとまたにおってきますよね。
ゴミそのものが中に残っているからです。
ミントのタブレットやガムも、これとよく似ています。

MSDマニュアル家庭版の口臭の解説には、洗口液や口臭防止スプレーなどの製品の多くは、においを抑える効果が20分以上続かないと書かれています。
日本歯科医師会の口臭についての解説でも、シュガーレスガムは口臭の原因物質を減らすのではなく、香料でにおいを隠す働きが主だとされています。

ミントそのものが悪いわけではありません。
人と会う直前の「お守り」としては、私もありがたく使っています。
ただ、香水だけで毎日をしのごうとすると、20分ごとにお守りが必要になってしまいます。

においの元の8〜9割は、お口の中にある

「胃が悪いからかな」と考える方も多いのですが、まず疑ってほしいのはお口の中です。
厚生労働省のe-ヘルスネット「口臭の原因・実態」によると、口臭の80%以上はお口の中で発生した気体によるものです。
日本歯周病学会のペリオブックでは、口臭に悩む方の90%はお口の中に原因があるといわれている、と紹介されています。
先ほどの日本歯科医師会の解説も、「胃が悪いと口臭が出る」というのはほとんどが誤解だと書いています。

においの正体は、細菌が食べかすやはがれた粘膜のたんぱく質を分解するときに出る、硫黄を含んだガスです。
代表的なのが硫化水素で、卵が腐ったようなにおいがします。
口臭は、お口の中の「生ゴミ」が細菌に分解されて出るにおい、と考えるとわかりやすいと思います。

まず見るべき口の中の3か所

においの元がたまりやすい場所は、だいたい決まっています。
洗面所の明るい照明の下で、鏡を見ながら確かめてみてください。

見る場所確かめることにおいとの関係
舌の奥白っぽい汚れが厚くついていないかいちばん多くにおいが作られる場所
歯と歯ぐきの境目、歯と歯の間磨くと血が出ないか、歯ぐきが赤く腫れていないか歯周病があると、においが強くなりやすい
唇や舌の乾きねばつく、乾いた感じがしないか唾液が減ると細菌が増えてにおいやすい

1か所目:舌の奥の白い汚れ

舌の表面をよく見ると、白っぽい苔のようなものがついていることがあります。
これは舌苔(ぜったい)と呼ばれる、はがれた粘膜や細菌、食べかすがたまったものです。
e-ヘルスネットでは、口臭の原因のほとんどは歯周病と舌苔で、2つを比べると舌苔から作られる量のほうが多いと説明されています。

見てほしいのは、舌の先ではなく奥のほうです。
ペリオブックでも、喉に近い舌の奥ではにおいのガスが高い濃度になると書かれています。
舌をべーっと前に出して、うっすら白い程度なら心配いりません。
表面のツブツブが見えなくなるくらい厚くついていたら、そこがお掃除どきです。

舌は、細かい凹凸に汚れが入り込みやすい、まな板のようなものです。
掃除をするときは、舌ブラシか歯ブラシで、奥から手前へ一方向に軽くなでるだけで十分です。
ゴシゴシこすると舌を傷つけて、かえってにおいの原因を増やしてしまいます。
1日1回、力を抜いて2〜3回なでたらおしまいにしてください。

タイミングは、舌の汚れがいちばん増えている朝がおすすめです。
1回で真っ白な舌に戻そうとせず、何日かかけて少しずつ薄くしていくくらいの気持ちで十分ですよ。

2か所目:歯と歯ぐきの境目、歯と歯の間

次に見てほしいのが、歯と歯ぐきの境目と、歯と歯の間です。
歯ブラシが届きにくいこの場所には歯垢(細菌のかたまり)がたまりやすく、放っておくと歯と歯ぐきの隙間ポケットが深くなっていきます。
ペリオブックによると、歯ぐきから血や膿が出るほど歯周病が進むと、口臭もより強くなります。

e-ヘルスネットでは、歯周病の方はメチルメルカプタンという、より不快なにおいのガスの割合が高くなりやすいとされています。
キッチンでいえば、シンクの排水口のふちにたまったぬめりのようなもの。
見えにくいところで、じわじわとにおいを出し続けます。

確かめるときは、においをかぐより「血がつくか」を見るほうが確かです。
フロスや歯間ブラシを通してみて、血がつく場所や、歯ぐきが赤くふくらんでいる場所があれば、そこに汚れがたまっているサインです。
歯周病は痛みがほとんどないまま進むので、毎回同じ場所から血が出るなら、一度歯医者さんで歯ぐきの検査を受けてみてください。

家でのお掃除は、歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に当てて、小刻みに動かすのが基本です。
歯と歯の間は、歯ブラシだけだとどうしても汚れが残るので、夜だけでもフロスか歯間ブラシを通してください。
お皿洗いでいえば、スポンジでは届かないコップの底を、細いブラシで洗うようなものです。
血が出ても、汚れが取れて歯ぐきが引きしまってくると、たいていは少しずつ出なくなっていきます。

3か所目:唇や舌が乾いていないか

3か所目は、場所というよりお口の中の状態です。
唾液は、お口の中をいつも洗い流してくれる「すすぎ水」のような存在です。
この水が減ってお口が乾くと、細菌が増えやすくなり、においも強くなります。

ペリオブックでも、起きたときや空腹のとき、緊張しているときは舌の表面が乾いて、舌苔が厚くなることがあると書かれています。
唇がカサカサする、舌が上あごにペタッと貼りつく、話しているとねばつく感じがする、といったときは、すすぎ水が足りていないサインです。

マスクの中で口が開きっぱなしになっていたり、仕事に集中して水分をとるのを忘れていたりすると、お口は乾きやすくなります。
乾いているなと感じたら、まずは水をひと口飲んでください。

日中の口臭は、時間帯でも強くなる

空腹のときと、黙って集中しているとき

口臭は、1日の中でも強くなったり弱くなったりします。
日本歯科医師会の解説では、起きたときがいちばん強く、食事をすると弱まり、昼食前や夕食前にまた強くなるとされています。
e-ヘルスネットでも、食事やうがいから時間がたつほど、においのガスの濃度が高くなるという調査が紹介されています。

舌は、食べたりしゃべったりして動くことで、自然にお掃除されています。
黙々とパソコンに向かっている午後や、緊張する会議の前は、舌も唾液もあまり動いていません。
「お昼前の打ち合わせで、なんだか口が気になる」というのは、気のせいではないんです。

外出先でできる3ステップ

ミントに手を伸ばす前に、次の3つを順番に試してみてください。

  • まず、水かお茶をひと口飲むか、お口に含んでぶくぶくする
  • 次に、口を閉じたまま舌で歯の表面をぐるりとなぞって、唾液を出す
  • お昼はできるだけ抜かずに食べる。食べられないときは、砂糖の入っていないガムを少し噛む

お茶は、砂糖の入っていないものを選んでください。
甘いコーヒー飲料でお口を潤すと、今度は虫歯の心配が出てきます。
元パティシエ見習いの私が言うのも何ですが、甘いものは「おいしく食べる時間」を決めて楽しむほうが、歯にも気持ちにもやさしいです。

歯医者さんに相談したいサインと、気にしすぎのサイン

自分の口臭は、自分ではわかりにくい

手のひらに息を吐いてにおいをかぐ方法は、実はあまり当てになりません。
e-ヘルスネットによると、人の鼻は自分のにおいに慣れてしまうため、自分の口臭は評価しにくく、自己評価と実際の口臭の有無は一致しないという調査結果もあります。
大学病院の口臭外来を受診した約1,000人のうち、約3分の1は治療が必要な口臭が見つからなかったそうです。

においをかいで確かめるより、この記事の3か所を目で見るほうが確かです。
そして、気になって何度もミントを噛んでしまう方ほど、実際にはにおっていないこともあります。
不安が強いときは、ひとりで抱えずに歯医者さんで確かめてもらうのが近道です。

こんなときは歯医者さんへ

次のような様子があれば、セルフケアだけで頑張らず、歯医者さんに相談してみてください。

  • 歯磨きやフロスのたびに、同じ場所から血が出る
  • 歯ぐきから膿が出る、歯がぐらぐらする
  • 舌の汚れが、やさしい掃除を続けても厚いまま
  • 大きな虫歯がある、入れ歯をきれいにできていない
  • 家族やパートナーから、においを指摘された

鼻づまりや鼻水が続くなど、鼻の症状があわせてあるときは、耳鼻科で原因が見つかることもあります。
大学病院などには、においのガスを機械で測る口臭外来もあります。
受付で「口臭が気になって」とひとこと伝えてもらえれば、それで大丈夫です。

まとめ

ミントやガムは、においの上から香りをかぶせる香水のようなものです。
口臭の8〜9割はお口の中で生まれているので、元をたどって掃除するほうが、結局はラクになります。

見るべき場所は、舌の奥の白い汚れ、歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間、そしてお口の乾きの3か所です。
舌はやさしく1日1回、歯の間は血がつくかどうかを目で確かめ、乾いたら水をひと口。
それでも気になるときは、歯医者さんで一緒に原因を探しましょう。

お口の健康は、人生の「おいしい」を守ること。
まずは今夜、歯磨きのあとに鏡で舌の奥をのぞいてみるだけでいいんです。
それだけで十分偉いです!