舌磨き、毎日やるべき?口臭が気になる夜のやさしい掃除法

歯を磨き終わって口をゆすいだあと、鏡の前でなんとなく舌を出してしまう夜ってありませんか。
白いものが乗っているのを見つけた瞬間、急に自分の息が気になってくる。
そして布団に入る前にスマホで「舌磨き 毎日」と検索する。
わかります、私も新人のころ、まったく同じことをしていました。

はじめまして、歯科衛生士の柚木葉子と申します。
20代のはじめ、パティシエを目指して洋菓子店で修行していたころ、毎日の試食と不規則な生活で1年に8本の虫歯を作りました。
「このままだと30代で総入れ歯になりますよ」と言われたときの、あの血の気が引く感覚は今でも忘れられません。
そこから縁があって歯科衛生士になり、気づけば18年。
これまでに5万人以上の方のお口を見せていただきました。

その中で、ここ数年いちばん相談が増えているのが舌磨きです。
「毎日やったほうがいいんですか」「やりすぎだと注意されたんですけど」「夜にやってもいいですか」。
聞かれ方はさまざまですが、みなさん決まって夜に気になって、夜に検索しています。

先に答えをお伝えしますね。
舌磨きは1日1回まで。
そして基本は朝で、夜は磨くよりも「うるおす」ほうが、翌朝の息にはずっと効きます。
この記事では、なぜそうなるのかという理由と、今夜からできるやさしい手順を、順番にお話ししていきます。

舌磨きは毎日やるべき? 先に答えをお伝えします

「毎日やるべきか」という質問には、実は「回数」と「タイミング」というふたつの問いが混ざっています。
まずはそこをほどいていきましょう。

1日1回までなら、毎日でも大丈夫です

厚生労働省が運営するe-ヘルスネットの口臭の治療・予防では、舌の清掃について「一日の舌清掃の回数は、起床時の一回で結構です」「それ以上行うと舌の粘膜を傷つけるおそれがあります」と、はっきり書かれています。
日本歯科医師会が運営する情報サイト「テーマパーク8020」でも、舌を傷つけないために一日に一度だけ、と案内されています。

つまり「毎日はやりすぎですか」という問いへの答えは、いいえ、です。
毎日でも構いません。
気をつけるのは日数ではなく、1日のうちに何回こするかのほうなんですね。

私の患者さんで、朝と夜と、食後にも磨いていた方がいました。
熱心なのは素晴らしいのですが、舌の先が赤くなって、熱いものがしみると言うんです。
回数を朝1回に減らしていただいたら、2週間ほどでヒリヒリは落ち着きました。
舌はやわらかい粘膜です。
お鍋のこびりつきを金たわしで毎食後こすっていたら、そりゃあ表面が傷みます。

「朝がいい」と言われるのには理由があります

なぜ朝なのか。
理由は、寝ている間の唾液にあります。

神奈川県歯科医師会の唾液の仕組みとはたらきによると、大人の唾液は1日に1.0〜1.5リットルほど出ていて、口の中の細菌や食べかすを洗い流す「自浄作用」を担っています。
ところが、夜眠っている間はこの分泌量が日中に比べて抑えられます。
台所でたとえるなら、水を流しっぱなしにしていたシンクの蛇口が、夜のあいだだけ止まるようなものです。

水が止まれば、汚れは流れずにそのまま残ります。
だから起きたばかりの舌には、一日でいちばん多く白いものが乗っている。
テーマパーク8020でも、多くの人の口臭は早朝がもっとも強く、食事をすると減っていくと説明されています。

いちばん溜まっているタイミングで一度きれいにする。
だから朝が合理的なんです。

では、夜に気になる人はどうすればいいのか

ここまで読んで、「でも私が気になるのは夜なんだけど」と思われたかもしれません。
そうですよね。
人と会うのも、家族と話すのも、夜のほうが多いですから。

ただ、夜に舌をこすっても、そのあと寝ている間にまた蛇口が止まります。
数時間後には元通りです。
夜のケアで本当に効くのは、こすって取ることではなく、朝までに増える細菌の「タネ」を減らしておくことと、口の中を乾かさないことのほうなんですね。

朝と夜で、役割はきれいに分かれています。

時間帯目的やることやらなくていいこと
夜(寝る前)朝までに増える細菌のタネを減らす/乾燥を防ぐ歯と歯のあいだまで掃除、うがい、鼻呼吸と加湿舌をゴシゴシこすること
朝(起床後)夜のあいだに溜まった舌苔を一度リセットする舌ブラシで奥から手前へ1回、そのあと歯みがき何度も往復させること

夜にどうしても舌をきれいにしたい日は、翌朝を休めばいい。
合わせて1日1回に収まっていれば、それで十分です。

そもそも舌の白いもの、あれは何なのでしょう

正体がわからないものは、必要以上に怖く見えます。
まずはこの子の身元を確認しておきましょう。

正体は、細菌と食べかすと、はがれた粘膜

舌の表面に乗っている白っぽいものを、専門的には舌苔(ぜったい)と呼びます。
中身は、口の中の細菌と、はがれ落ちた粘膜の細胞、そして食べかすです。

舌の表面をよく見ると、細かい突起がびっしり生えているのがわかります。
カーペットのような構造なので、細かいものが引っかかりやすい。
フローリングの床とじゅうたんを比べたら、ほこりが残るのは断然じゅうたんのほうですよね。
舌はあの、じゅうたんのほうなんです。

においの8割以上は、口の中から出ています

「胃が悪いから口が臭いのかも」と心配される方は本当に多いのですが、e-ヘルスネットの口臭の原因・実態によれば、口臭の80%以上は口の中で発生した気体が原因です。
においのもとになるのは揮発性硫黄化合物と呼ばれる物質で、硫化水素とメチルメルカプタンのふたつでその約9割を占めます。

このにおい物質は、空気を嫌う細菌が、唾液や粘膜、食べかすに含まれる成分を分解するときに生まれます。
そして発生源としては、歯周病と舌苔がほとんどを占めていて、このふたつでは舌苔から出る量のほうが多いとされています。

舌が注目されるのには、ちゃんと根拠があるわけです。
ただ、だからといって「削り取れば消える」という話ではありません。

うっすら白いのは、取らなくていいものです

ここが、いちばん誤解されているところです。

健康な舌にも、うっすらとした白い膜は乗っています。
これは粘膜を守るためのもので、ゼロにするものではありません。
まな板を熱湯消毒しすぎて反ってしまうのと同じで、やりすぎるとかえって傷みます。

目安としては、こんな感じで見ています。

  • 舌のピンク色がうっすら透けて見える程度なら、そのままでいい
  • 白いものが厚く盛り上がって、舌の地の色が見えないなら、朝に一度整える
  • こすっても取れない白い部分があるなら、自分で取ろうとせず歯科で診てもらう

鏡の前で「白い=汚い」と決めつけないでください。
私は患者さんに、「舌の色は、体温計みたいなものです」とお話ししています。
数字を下げるためのものではなくて、今日の調子を教えてくれるもの、という意味です。

口臭が気になる夜の、やさしい掃除法

お待たせしました。
ここからが、今夜からできる具体的な手順です。
所要時間は、いつもの歯みがきに2〜3分足すくらいだと思ってください。

まず、夜の歯みがきを「その日の最後」にする

拍子抜けするかもしれませんが、夜のケアでいちばん効くのはここです。

寝ているあいだは唾液が減り、口の中の細菌が増えやすくなります。
その状態でスタートする細菌の数を、寝る前にどれだけ減らせるか。
これが翌朝の舌の白さと、朝いちばんの息を左右します。

大事なのは順番です。
歯を磨いたあとにアイスを食べたり、寝る前にカフェオレを飲んだりすると、そこからまた振り出しに戻ります。
「歯みがきを寝る前にする」ではなく、「歯みがきをその日の飲み食いの最後にする」と考えてみてください。

歯と歯のあいだも、この夜の1回だけは通しておきたいところです。
テーマパーク8020でも、定期健診と歯石除去を習慣にしていないと舌清掃の効果も限られる、と注意が添えられています。
歯ぐきに汚れが残ったままだと、舌だけ磨いてもにおいのもとは残り続けます。

舌は磨かず、ゆすいで流す

夜の舌は、こするのではなく流します。

やり方は簡単で、口に含んだ水を、舌の上を通すように意識しながらゆすぐだけ。
上を向いてガラガラする、いわゆるうがいではありません。
頬をふくらませて、水を舌の上で前後に転がすイメージです。
お皿を洗う前に、ざっと水で流しておくのと同じ感覚ですね。

これだけでも、舌の上に浮いている食べかすはかなり落ちます。
ブラシで引っかき回すより、粘膜にはずっとやさしい方法です。

寝ている間、口を乾かさない

そして夜のもうひとつの仕事が、乾燥対策です。

日本口腔外科学会の口の中が乾燥するというページでは、口腔乾燥症の症状として、口の中のネバネバ感やヒリヒリ感に加えて、口臭が強くなることが挙げられています。
原因として並んでいるのは、薬の副作用、糖尿病、シェーグレン症候群、加齢による筋力の低下、ストレスや緊張、そして口呼吸です。

このうち、今夜から自分で手が届くのは口呼吸と部屋の乾燥でしょうか。

  • 寝る前にコップ1杯の水を飲んでおく
  • 鼻がつまっていない日は、口を閉じて眠ることを意識する
  • 冬やエアコンの効いた季節は、寝室の加湿を少しだけ足す
  • 唇が乾く人は、リップクリームを塗っておくと口が開きにくくなる

鼻がつまって口呼吸になってしまう方は、耳鼻科で相談したほうが早いこともあります。
無理にテープなどで口をふさぐのは、息苦しさや持病との兼ね合いもあるので、自己判断ではなく主治医に一度聞いてみてください。

どうしても気になる夜の「1回だけ」ルール

大切な予定の前日など、どうしても夜に舌をきれいにしたい日もありますよね。
そのときは、次の約束だけ守っていただければ大丈夫です。

  • その日の朝は舌を磨いていないこと(磨いた日は夜はお休み)
  • 舌ブラシを水で濡らすだけで、歯みがき粉はつけない
  • 奥から手前に、多くても10回まで
  • 少しでもヒリヒリしたら、その時点でやめる

これで1日1回の枠に収まります。
翌朝は、うがいだけで十分です。

私自身、激辛料理と堅焼きせんべいの食べ歩きが趣味なので、夜に「今日はさすがににおうかも」と思う日があります。
そういう日はこのルールで夜に1回。
翌朝はさっとうがいをして終わりにしています。

朝の舌磨き、正しいやり方をおさらいします

夜の話が続きましたが、メインイベントである朝のやり方も整理しておきましょう。
ここは我流の方がとても多くて、正直いちばん歯がゆく思っているところです。

道具は舌ブラシ。歯みがき粉はつけません

まず道具から。
テーマパーク8020では、舌の清掃道具は大きく舌ブラシと舌ベラに分かれ、Kleinbergらが2002年にInt Dent Jへ報告した研究では、舌ベラよりブラシのほうが清掃効果が大きかったと紹介されています。
迷ったら、やわらかい毛のついた舌ブラシを選んでください。

歯ブラシで代用している方も多いのですが、歯ブラシの毛は歯という硬いものを磨くために設計されています。
やわらかい舌には、少し強すぎます。
どうしても手元にない日は、毛先を寝かせて軽くなでる程度にとどめてください。

そして、歯みがき粉はつけません。
多くの歯みがき粉には、汚れを落とすための研磨剤や、泡立ちをよくする成分が入っています。
泡が立つと磨けた気になって、必要以上にこすってしまうんですね。
舌ブラシは、水で濡らすだけで大丈夫です。

動かし方は「奥から手前へ、一方通行」

ここがいちばん大事です。

テーマパーク8020の舌の清掃の方法では、鏡を見ながら大きく口を開け、思いきり舌を外に出し、舌が作る山の頂上にブラシを当てて前方に掻き出す、と手順が示されています。
そして「決して前後にブラッシングしてはいけません」と、はっきり書かれています。

前後に往復させると、いったん掻き出した汚れをまた奥へ押し戻すことになります。
掃き掃除で、ほうきを前後に振り回している状態を想像してみてください。
ほこりが舞うだけで、集まりませんよね。

流れとしてはこうなります。

  1. 鏡の前で口を大きく開け、舌を思いきり前に出す
  2. 見えるいちばん奥にブラシを当てる
  3. そのまま手前へ、一方向にすっと引く
  4. 2〜3回引いたら、ブラシを流水で洗う
  5. 白いものが取れにくくなってきたら、そこで終わり

回数は、慣れれば10回ほどできれいになるとされています。
30回まで安全という報告もありますが、少ないに越したことはありません。

もうひとつ、順番のこと。
テーマパーク8020では舌の清掃を朝食直後、歯みがきの前に行うと案内されていて、歯みがきを先にすると、かえって口臭が強くなることもあると書かれています。
一方でe-ヘルスネットは、起床してすぐに行う方法を紹介しています。
どちらも「朝の1回」という点では同じなので、ご自身の生活リズムに合うほうで構いません。
朝食を抜きがちな方は、起きてすぐのほうが続きやすいと思います。

力は100g。台所のはかりで一度だけ測る

「軽い力で」と言われても、どのくらいかわかりませんよね。
テーマパーク8020には、100g以下の圧力という具体的な数字と、台所用のはかりに舌ブラシを当てて感覚を覚える方法が紹介されています。

これ、ぜひ一度やってみてください。
実際にはかりに当ててみると、100gって驚くほど軽いんです。
みかん1個より軽い。
その感覚を手が覚えたら、あとは毎朝それより弱く動かすだけです。

私が担当していた患者さんの中で、これをやってくださった方は例外なく「今までの半分以下でした」とおっしゃいました。

オエッとならないコツ

舌磨きが続かない理由の第1位が、これです。
喉の奥に触れると出てしまう反射なので、根性の問題ではありません。

コツはいくつかあります。

  • 舌を引っ込めず、思いきり前に出したままにする
  • 舌が山になった、その頂上より奥にはブラシを入れない
  • 息を止めているあいだに、さっと動かす
  • 朝いちばん、胃が空っぽのときに行う

それでも苦手な方は、無理に奥を攻めなくて大丈夫です。
見える範囲だけでも、やらないよりずっといいですから。

磨きすぎのサインと、舌が出しているSOS

続けるうえで、いちばん気にかけていただきたいのがここです。
舌はけっこう素直に、やりすぎのサインを出してくれます。

ヒリヒリする、味がぼやける

まず、しみる感じ。
熱いものや辛いものが以前よりしみるようになったら、表面が傷んでいる可能性があります。

それから、味です。
「なんとなく味が薄く感じる」「いつもの味噌汁が物足りない」といった変化は、見過ごされがちですが大切なサインです。
舌の表面には味を感じるための細かい器官があり、強くこすり続けると影響が出ることがあります。

食べる楽しみが減ってしまったら、口臭対策としては本末転倒ですよね。
どちらか思い当たったら、1週間ほど舌磨きをお休みして、うがいだけにしてみてください。

舌の見た目で見分ける

朝、鏡の前で30秒。
その日の舌を見る習慣がつくと、変化にも早く気づけます。

舌の見え方考えられることどうするか
うっすら白く、ピンクが透けている健康な状態そのままでいい
白いものが厚く、地の色が見えない溜まりすぎ、口が乾いている朝に1回だけ整える、乾燥対策も
こすっても取れない白い部分がある自己判断できない状態削らずに歯科で診てもらう
白と赤がまだらで、模様が日替わりで変わる地図状舌の可能性痛みがなければ様子見、続くなら相談
表面がつるつるで赤い、ヒリヒリする磨きすぎ、または全身の要因舌磨きを休んで歯科・内科へ

日本口腔外科学会の舌がただれるというページでは、地図状舌について、良性のもので、赤い部分の形や大きさは日々変わっていくと説明されています。
2歳以上の健康なお子さんの1〜6%ほどに見られるとのことで、原因ははっきりしておらず、治療も基本的には必要ありません。
知らずに見ると驚く見た目なので、お子さんの舌を見てぎょっとした方は、まずこの可能性を思い出してみてください。

こすっても取れない白は、自分で削らない

同じページには、こすってもとれない白色の板状あるいは斑状の変化として白板症が、また、灰白色や乳白色の膜が付く状態として口腔カンジダ症が紹介されています。
口腔カンジダ症のほうは、体の抵抗力の低下や唾液量の減少、長期間の抗生物質の服用などがきっかけになるとされています。

見た目だけで、鏡越しに素人判断はできません。
ここは私も断言しますが、取れない白いものを力ずくで削るのだけは、絶対にやめてください。
傷をつけて、かえって治りにくくなります。

日本口腔外科学会も、口の中を清潔にしても改善しないようなら受診をすすめています。
2週間ほど様子を見て変わらないなら、それが受診のタイミングです。

舌磨きだけでは消えない口臭もあります

正直にお伝えしておきたいことがあります。
舌をきちんと掃除しても、においが変わらないケースは確かにあります。

歯ぐきが原因のとき

e-ヘルスネットが挙げているとおり、においの発生源は舌苔と歯周病がほとんどです。
歯と歯ぐきのあいだにできる隙間ポケットに汚れが溜まっていると、そこからにおいのもとが出続けます。

ここは、セルフケアだけではどうにもなりません。
ポケットの奥に固まった歯石は、歯ブラシでもフロスでも取れないんです。
排水口の奥にこびりついたぬめりを、スポンジで届かせようとしているようなものですね。

歯ぐきから血が出る、朝起きたときに口がネバネバする、こうした心当たりがあれば、舌より先に歯ぐきを診てもらってください。

口が乾いているとき

もうひとつが乾燥です。
唾液が減ると自浄作用が弱まり、においのもとが洗い流されにくくなります。

日本口腔外科学会が原因として挙げている中には、飲んでいるお薬の副作用も含まれています。
血圧やアレルギー、気分の落ち込みに関するお薬などで、口の渇きが出ることは珍しくありません。
心当たりがある方は、勝手にやめずに、処方してくださった先生に「最近口が渇くのですが」と伝えてみてください。
別の選択肢を出してもらえることがあります。

洗口液とガムは、どこまで頼れるか

夜のお守りとして洗口液を使いたい方もいると思うので、ここも正直に書いておきます。

テーマパーク8020のうがい薬やチューインガムに口臭予防効果はありますかというページでは、0.1%の塩化亜鉛入り洗口液について、洗口から90分後ににおい物質が9割近く減ったというデータが紹介されています。
ただし同じページには、9割減っても嗅覚の特性上、実際に感じるにおいは半分ほどしか減らないとも書かれています。

さらに、殺菌力の強い洗口液を頻繁に使いすぎると、口の中の細菌のバランスが崩れて、かえって困った菌が増えることがあるとも指摘されています。
口の中の細菌は、普段は私たちを守ってくれている存在でもあるんですね。

ガムについても同じページに記載があり、砂糖入りのガムはにおい物質を大きく減らす一方、シュガーレスのものは香りで覆う働きが主とされています。
ただ、虫歯を診てきた立場から言わせていただくと、においのために砂糖入りのガムを常用するのはおすすめできません。
唾液を出す目的でなら、シュガーレスのもので十分だと思っています。

洗口液もガムも、歯みがきの代わりにはなりません。
仕上げの香水のようなもの、と考えていただくのがちょうどいい距離感です。

歯科に相談したい目安

自分で抱え込まないでいただきたいので、線引きをはっきりさせておきます。

  • 舌のケアと夜の歯みがきを2週間続けても、においが変わらない
  • こすっても取れない白い部分が、2週間以上続いている
  • 舌がヒリヒリする、味の感じ方が変わった
  • 歯ぐきから血が出る、腫れている、口の中がネバネバする
  • 口の渇きが強く、話しづらい、食べにくいと感じる

歯科医院は、痛くなってから駆け込む場所ではありません。
「においが気になるので見てもらえますか」で、まったく問題なく通じます。
私たちにとっては、日常的なご相談のひとつです。

完璧じゃなくていい、70点の続け方

最後に、続けるための話をさせてください。
ここが抜けると、どんなに正しい方法もただの知識で終わってしまいます。

舌ブラシは歯ブラシの隣に置く

新人のころの私は、教科書どおりのケアを患者さんに求めすぎて、「あなたの指導は息が詰まる」と担当を外されたことがあります。
あのときは本当に落ち込みました。
でもおかげで、生活を無視した正論は誰にも届かないと、身にしみてわかりました。

だから道具の置き場所から提案します。
舌ブラシは、引き出しの中ではなく、歯ブラシのすぐ隣に立てておいてください。
目に入らないものは、続きません。
洗面所の景色を変えるほうが、意志の力より確実です。

できない日は、飛ばしていい

疲れて帰ってきた夜に、フロスまで完璧にやろうとしなくていいです。
そういう日は、うがいをして、水を1杯飲んで寝てください。
それでも、何もしないよりずっといい。

私も部屋の片づけはまるで苦手で、家族に「口の中は整理整頓されてるのに、部屋は散らかってるね」と笑われています。
人間、全部は無理です。
70点を毎日のほうが、100点を三日より強い。

まずは1週間、朝の30秒だけ

いきなり全部を変えなくて大丈夫です。
今夜は歯みがきを最後にして、水を1杯。
そして明日の朝、鏡の前で舌を見て、奥から手前に軽く引く。
これを1週間だけ続けてみてください。

1週間経つと、たいていの方が「白いのが薄くなった」とおっしゃいます。
そこまで来たら、あとは体が勝手に続けてくれます。

まとめ

長くなったので、大事なところだけもう一度。

舌磨きは1日1回まで。
毎日でも構いませんが、こするのは1回にとどめてください。
そしてタイミングは朝が基本です。
寝ているあいだは唾液が減って汚れが溜まるので、いちばん溜まった状態でリセットするのが理にかなっています。

夜にできることは、こすることではありません。
その日の飲み食いの最後に歯を磨いて、舌はゆすいで流し、口を乾かさずに眠る。
この3つが、翌朝の息をいちばん変えてくれます。

そして、白いものをゼロにしようとしないこと。
うっすら白いのは、舌が自分を守っている証拠です。
取れない白や、ヒリヒリ、味の変化があるときは、削らずに歯科へ。

お口の健康は、人生の「おいしい」を守ることだと思っています。
私が激辛も堅焼きせんべいも楽しめているのは、20代のあの絶望のあと、やり方を変えたからです。

まずは今夜、歯を磨いたあとに舌の上を水で1回ゆすいでみてください。
それだけで十分偉いです。
完璧じゃなくていいんです、昨日の自分より、ほんの少しだけやさしく磨ければ。