冷たい水を飲んだ瞬間、歯にキーンときて思わず頬を押さえる。
わかります、あれは地味につらいですよね。
口腔ケアアドバイザーで歯科衛生士の柚木葉子です。
しみるのは、歯の内側がむき出しになっているサインです。
磨く力、歯磨き粉の使い方、酸っぱいものと食いしばりの3つを見直すと楽になることが多いので、その方法と、我慢せず歯医者さんへ行きたい目安をお伝えします。
目次
冷たい水がしみるのはなぜ?
歯の「内側」がむき出しになっている
歯のいちばん外側を覆っているエナメル質は、実は痛みを感じません。
感じるのは、その内側にある象牙質という部分です。
日本歯科医師会の「知覚過敏」の解説によると、象牙質には無数の小さな管があり、ここを通って刺激が歯の神経に伝わります。
フライパンのコーティングがはがれると、熱が一気に伝わって焦げつきやすくなりますよね。
知覚過敏は、歯の表面がすり減ったり、歯ぐきが下がって根元の象牙質が出てきたりして、冷たさが神経に届きやすくなった状態です。
きっかけには、歯ぐきが下がる、歯がすり減る、酸で溶ける、歯が欠ける、虫歯治療やホワイトニングのあと、などがあります。
厚生労働省の令和6年歯科疾患実態調査では、「冷たいものや熱いものがしみる」と答えた人が全体で7.8%、35〜39歳では17.8%でした。
30代後半なら、5〜6人に1人がしみる経験をしている計算です。
しみるのはあなただけではないので、まずは安心してください。
知覚過敏と虫歯は、しみ方で見当をつける
困るのは、虫歯でも同じように冷たい水がしみることです。
見分けるヒントになるのが、しみている時間の長さと痛みの強さです。
| 知覚過敏のことが多い | 虫歯や神経の炎症が疑われる | |
|---|---|---|
| しみる長さ | キーンときて、長くても1分以内に消える | しみる感じが長く続く |
| 痛みの強さ | 鋭いけれど、すぐおさまる | とても強い、何もしなくてもズキズキする |
| きっかけ | 冷たい水、風、歯ブラシが当たったとき | 刺激がなくても痛むことがある |
日本歯科医師会の解説では、歯ぐきが下がって起こる知覚過敏の痛みは、長くても1分以内で消えるとされています。
反対に、痛みが比較的長く続いたり、とても激しかったりするときは、歯の神経の炎症が疑われます。
ただ、ある程度進んだ虫歯や歯のひびでも冷たい水はしみるので、自分で見分けるのは難しいとも書かれています。
表はあくまで見当をつけるためのものなので、「知覚過敏だろう」と決めつけずに、一度は歯医者さんで確かめてもらってください。
見直し1:磨くときの力と歯ブラシ
ゴシゴシ磨きが、根元を削っていることがある
知覚過敏で来られる方には、実はまじめに磨いている方が多いんです。
焦げついた鍋を金たわしで力いっぱいこすると、汚れと一緒に鍋の表面まで傷がつきますよね。
歯も同じで、強い力で大きく動かす磨き方や、かための歯ブラシは、歯ぐきを下げたり歯の根元をすり減らしたりする原因になります。
山形県口腔保健支援センターの歯みがきの仕方の資料にも、歯の根元がすり減っている人はみがく力が強い、と書かれています。
鏡で歯と歯ぐきの境目を見て、根元が少しえぐれたように見えたり、前より歯が長くなったように感じたりしたら、力の入れすぎを疑ってみてください。
150〜200gの力加減を、キッチンスケールで覚える
同じ資料では、みがく力の目安を150〜200g、毛先が広がらない程度の軽い力としています。
と言われても、ピンとこないですよね。
おすすめは、キッチンスケールに歯ブラシの毛先を押し当ててみることです。
思っているよりずっと軽くて、「えっ、これだけ?」と驚く方がほとんどです。
歯ブラシは毛のかたさが「やわらかめ」か「ふつう」のものにして、鉛筆を持つように軽く握ります。
グーで握ると、どうしても力が入りすぎてしまいます。
毛先が1か月もたたずに外へ広がってしまう方は、力が強いサインなので、持ち方から変えてみてください。
見直し2:知覚過敏用の歯磨き粉は「続けて」使う
しみ止め成分は、毎日の積み重ねで効いてくる
知覚過敏用の歯磨き粉には、しみるのをやわらげる成分が入っています。
代表的なのが硝酸カリウムで、日本歯科医師会の解説では、神経を興奮しにくくするはたらきがあり、配合された歯磨き剤を続けて使うことで改善効果があると確かめられているそうです。
ほかに、象牙質の小さな管の入り口をふさいで、刺激を届きにくくする成分もあります。
1〜2回使って「効かない」とやめてしまう方が、実はとても多いんです。
こうした歯磨き粉は、数週間かけて少しずつ効いてくるものと考えてください。
しみなくなったからといってすぐ普通の歯磨き粉に戻すと、またしみてくることもあります。
すすぎは少なめに、しみる場所もそっと磨く
せっかくの成分も、何度もうがいをすると流れてしまいます。
磨いたあとのすすぎは、少なめの水で1回くらいにしておきましょう。
歯の強化コーティングであるフッ素も、そのほうがお口に残りやすくなります。
しみる歯の根元は、歯ブラシが当たるとキーンとするので、つい避けてしまいがちです。
でも、そこを磨かずにいると汚れがたまって、今度は虫歯の心配が出てきます。
やわらかめの歯ブラシで、そっとなでるように磨いてください。
知覚過敏用の歯磨き粉は、しみる症状をやわらげるためのものです。
虫歯や歯のひびを治すものではないので、数週間続けても変わらないときは歯医者さんへ行きましょう。
見直し3:酸っぱいものと、寝ているあいだの食いしばり
ちびちび飲みと、直後のゴシゴシに気をつける
日本歯科医師会の解説では、エナメル質はpH5.5程度で溶け始めるとされています。
そのうえで、炭酸飲料を長い時間かけて飲む習慣や、酸っぱい飲食物を頻繁に長くとる習慣が、知覚過敏のリスクとして挙げられています。
健康のために続けている黒酢ドリンクやレモン水、スポーツドリンクを、デスクでちびちび飲んでいませんか。
飲むなら時間を決めて飲み、あとで水をひと口飲んでお口をすすぐだけでも違います。
「酸っぱいものを食べたら30分は歯を磨かないほうがいい」という話を聞いたことがあるかもしれません。
日本歯科保存学会の見解では、30分間は歯磨きを避けるべきだという点は確認できていないとしたうえで、酸性の強い飲食物をとったときは歯の酸蝕に気をつけて磨くことをすすめています。
私は、酸っぱいものをとったあとは、まず水でお口をすすいで、いつも以上にやさしい力で磨くようにお伝えしています。
朝、あごが疲れている人は食いしばりかも
朝起きたときにあごがだるい、歯が浮いたような感じがする、家族に歯ぎしりを指摘された、という方はいませんか。
寝ているあいだに、強く食いしばっているのかもしれません。
強い力が毎晩かかると、歯の表面がすり減ったり細かいひびが入ったりして、しみやすくなります。
寝ているあいだのことは、自分ではどうにもできません。
歯医者さんでは、歯を守るためのマウスピースを作ってもらえます。
歯ぎしりそのものを止めるものではありませんが、歯がすり減るのを防ぐクッションの役目をしてくれます。
日中も、パソコン作業中に上下の歯がくっついていないか、ときどき気にしてみてください。
何もしていないときの上下の歯は、少し離れているのが自然な状態です。
我慢しないで、歯医者さんへ行きたいとき
こんなしみ方は早めに相談を
次のようなときは、3つの見直しを待たずに歯医者さんに相談してください。
- しみる感じが1分以上続く、または前より長くなってきた
- 何もしていないのにズキズキする、夜に痛みで目が覚める
- 噛んだときにピリッと痛む歯がある
- 知覚過敏用の歯磨き粉を数週間続けても変わらない
- しみる歯が1本だけで、だんだんひどくなっている
「このくらいで行ってもいいのかな」と迷う方が多いのですが、しみる段階のうちに来てもらえると、軽い処置で済むことも多いんです。
もし虫歯だったとしても、早いほど治療は小さく済みます。
歯科医院では、こんなことをしてくれます
知覚過敏の処置は、軽いものから順に選ばれます。
| 処置 | どんなことをするか |
|---|---|
| 薬の塗布 | 象牙質の小さな管をふさぐ薬を塗る |
| コーティング | 接着材や樹脂の薄い膜で、むき出しの部分を覆う |
| 詰めて形を戻す | すり減ったりえぐれたりした部分を樹脂で埋める |
| マウスピース | 寝ているあいだの食いしばりから歯を守る |
| 神経の処置 | ほかの方法で治まらず、生活に支障があるときの最後の手段 |
日本歯科医師会の解説では、象牙質の管をふさぐ方法は、歯磨き粉より歯科医院で塗るほうが効果が高く、即効性もあるとされています。
神経を取る処置については、できれば神経は残すべきで、生活に支障が出るような場合に行うと書かれています。
いきなり大がかりな治療になることはまずないので、怖がらずに「冷たいのがしみるんです」と伝えてみてください。
まとめ
冷たい水がしみるのは、歯の内側がむき出しになっているサインです。
見直したいのは、磨くときの力と歯ブラシ、知覚過敏用歯磨き粉の続け方、酸っぱいものの摂り方と食いしばりの3つです。
ただし、虫歯や歯のひびでも同じようにしみるので、「知覚過敏だろう」と決めつけて我慢しないでください。
しみる感じが長く続いたり、だんだんひどくなったりするときは、早めに歯医者さんへ。
完璧じゃなくていいんです。
昨日の自分より、一本だけ丁寧に磨ければ。
まずは今夜、キッチンスケールに歯ブラシを押し当てて、150gの軽さを手で覚えてみてください。
それだけで十分偉いです!