歯ブラシのおすすめは人それぞれ。300円でも合えば正解です

「結局どの歯ブラシがいいの?」とランキングを見比べて、よけい迷ってしまうこと、ありますよね。
わかります、私もドラッグストアの売り場でよく立ち止まっています。
口腔ケアアドバイザーで歯科衛生士の柚木葉子です。

先に答えを言うと、正解の1本はお口の数だけあります。
この記事では、値段ではなく「自分に合うか」で選ぶための見方と、300円の歯ブラシを正解にし続けるコツをお伝えします。

「おすすめの歯ブラシ」が人によって違う理由

口の大きさも歯並びも、磨き方のクセも違う

歯科衛生士として18年、延べ5万人以上のお口の中を見てきました。
同じお口はひとつもありません。
口が小さくて奥歯まで指1本入りにくい方もいれば、歯が重なって生えていて段差だらけの方もいます。

磨き方のクセも人それぞれです。
ゴシゴシと力いっぱい磨く方、ほとんど歯ブラシを動かさずに「当てているだけ」の方、右利きなのでいつも左の奥歯だけ磨き残す方。
ランキングで1位の歯ブラシが、このすべての人に合うことは、まずありません。

値段より「合うかどうか」で結果が変わる

歯磨きは、お皿洗いと似ています。
高いスポンジを買っても、フライパンの角に届かなければ、油汚れはそこに残ります。

歯も同じで、落としたいのは歯と歯茎の境目や、奥歯の溝にたまる「細菌の塊うんち(プラーク)」です。
そこに毛先が届くかどうかが勝負なので、1本300円でも、あなたのお口の形に合って毛先が届くなら、それが正解の歯ブラシです。

新人のころの私は、教科書どおりの「理想の歯ブラシと理想の磨き方」を患者さんに押しつけていました。
ある方から「あなたの指導は息が詰まる」と言われ、担当を外されたこともあります。
それ以来、道具も磨き方も、その人の生活とお口に合わせて選ぶようにしています。

自分に合う歯ブラシを見つける3つのチェック

売り場で迷ったら、見るところは3つだけです。
ヘッドの大きさ、毛のかたさ、持ち手の形。
この順番で絞っていけば、棚の前で10分も悩まずにすみます。

ヘッドは「奥歯2本分」くらいが目安

ヘッドとは、毛が植わっている先端の部分です。
日本歯科医師会のサイトに掲載されている、ライオンの歯ブラシ開発者によるハブラシの選び方では、大きなヘッドは一度に広い範囲を磨ける一方で、奥歯の奥や歯並びの悪いところに届きにくいと説明されています。

私が患者さんにお伝えしている目安は、ヘッドの長さが奥歯2本分くらいのものです。
迷ったら、小さめを選んでおけば大きく外すことはありません。
小さいヘッドは隅々まで届くぶん、1回で磨ける範囲が狭いので、1〜2本ずつ場所を移しながら磨いてください。

毛のかたさは「ふつう」から試す

歯ブラシのパッケージには、毛のかたさが「かため」「ふつう」「やわらかめ」などで表示されています。
ライオンの情報サイトLidea(リディア)では、ふつうは効率よく汚れを落とせるかたさ、やわらかめは歯ぐきへの当たりがやさしいかたさ、かためは汚れを落とす力が高いかたさとして紹介されています。

最初の1本は「ふつう」から試してみてください。
歯茎が腫れていて磨くと痛い方、出血しやすい方は「やわらかめ」がおすすめです。
痛いと磨く気がなくなってしまうので、続けられることを優先します。

「かため」は、力の強い方が使うと歯茎を傷つけやすいので、私はあまりおすすめしていません。
ゴシゴシ派の方ほど、かためを選びがちなんですけどね。

持ち手は「持ち方」に合わせる

持ち手(ハンドル)は、どう握るかで選びます。
先ほどの開発者の解説では、手のひら全体で握る「パームグリップ」の方は太めのハンドル、鉛筆のように持つ「ペングリップ」の方は細めのハンドルが合うとされています。

売り場で実際に握ってみて、手になじむかどうかを確かめてください。
私はペングリップ派なので、まっすぐで細い持ち手を使っています。

ここまでをまとめると、次のようになります。

お口や磨き方の特徴選びたい歯ブラシ
口が小さい、奥歯まで届きにくい小さめのヘッド
歯並びに段差や重なりがある小さめのヘッド、毛先が細いタイプ
歯茎が腫れている、磨くと血が出るやわらかめ
つい力を入れてゴシゴシ磨いてしまうふつう〜やわらかめ、細めの持ち手
手のひらで握ると安定する太めの持ち手

毛先の形にもいくつか種類があります。
先が細く加工されたタイプは、歯と歯茎の隙間ポケットや歯の間の狭いところに入りやすいので、歯茎が気になる方は試してみる価値があります。

電動歯ブラシは買ったほうがいいのか

研究では電動が上回っているが、差は「大差」ではない

「やっぱり電動のほうがいいんですか?」も、よく聞かれる質問です。
世界中の研究をまとめて評価しているコクランのレビュー(2014年)では、51の試験、4,624人分のデータを分析しています。

その結果、電動歯ブラシは手用の歯ブラシに比べて、細菌の塊(プラーク)が1〜3か月の使用で11%、3か月を超えると21%多く減っていました。
歯茎の炎症も、それぞれ6%、11%減っています。
なかでも、ヘッドが小刻みに回転しながら往復する「回転振動式」のデータが多く、はっきりした差が確認されています。

電動のほうが有利、というのは本当です。
ただ、手用で磨いている人が悪い結果になるという話ではありません。
差はあくまで平均で、手用でも毛先が当たるように磨けていれば、きちんと汚れは落ちます。

電動が向く人、手用で十分な人

電動歯ブラシは数千円から数万円、替えブラシも定期的に必要です。
向き不向きで考えるのがいいと思います。

電動が向いているのは、たとえばこんな方です。

  • 手首を細かく動かすのが苦手で、どうしても磨き残しが出る
  • 手や指に力が入りにくい
  • 新しい道具を使うとやる気が出るタイプ

一方で、手用のままで困っていない方、歯医者さんで磨き残しを指摘されていない方は、無理に買い替えなくて大丈夫です。
高い電動歯ブラシを買って、充電が面倒になり洗面所の飾りになっているお宅を、私は何軒も見てきました。
毎日使える300円の歯ブラシのほうが、使わない電動よりずっと働きます。

300円の歯ブラシを正解にし続けるコツ

1か月で交換すると、300円の実力が保てる

どんなに合う歯ブラシでも、毛先が開けば実力は落ちます。
全日本ブラシ工業協同組合のモデル実験では、1か月分のブラッシングをした歯ブラシは、新品に比べて汚れを落とす力が約26%下がっていました。
同じページによると、実際の平均使用期間は約2か月で、3か月以上替えない人も多いそうです。

包丁も、切れなくなったまま使うと余計な力が要りますよね。
歯ブラシも毛先がへたると、つい力を入れてゴシゴシこすることになり、歯茎を痛めるもとになります。

私は毎月1日を交換日にしています。
300円の歯ブラシなら、1か月に1本替えても年間3,600円ほどです。
高い歯ブラシを半年使い続けるより、手ごろな歯ブラシを毎月新しくするほうが、お口の中はきれいに保てます。

替えどきは「裏から見る」とわかる

1か月たっていなくても、毛先が開いたら替えどきです。
歯ブラシを裏返して、ヘッドの後ろ側から見てみてください。
ヘッドの幅より毛がはみ出して見えたら、交換のサインです。

逆に、1週間ほどで毛先が開いてしまう方は、磨くときの力が強すぎます。
毛先が広がらない程度の、やさしい力で十分です。

合っているかどうかは舌で確かめる

新しい歯ブラシが自分に合っているかは、1〜2週間使ってみるとわかります。
磨き終わったあと、舌で歯の裏側や奥歯の表面をなぞってみてください。
ツルツルしていれば毛先が届いていて、ザラザラやヌルッとした感じが残る場所は、その歯ブラシでは届きにくいところです。

奥歯の裏がいつもザラつくならヘッドをもう一回り小さく、磨くたびに歯茎がヒリヒリするなら毛をやわらかめに変えてみます。
パティシエ見習い時代、味見をしながら砂糖の量を少しずつ変えていったのと同じで、1回で正解を当てなくていいんです。

鉛筆持ちで、小刻みに動かす

最後に、どの歯ブラシでも効果が変わる持ち方の話をさせてください。
いちばんのおすすめは、鉛筆を持つように歯ブラシを軽くつまむ持ち方です。
自然と力が抜けるので、歯茎を傷つけにくくなります。

動かし方は、歯と歯茎の境目に毛先を当てて、1〜2本分の幅で小刻みに動かすだけです。
大きくゴシゴシ動かすと、毛先が歯の出っ張りの上を滑るだけで、境目の汚れはあまり落ちません。

まとめ

歯ブラシのおすすめは、お口の大きさや歯並び、磨き方のクセによって変わります。
売り場では、ヘッドは奥歯2本分くらいの小さめ、毛のかたさは「ふつう」から、持ち手は自分の持ち方に合うものを選んでみてください。
そして、どれだけ合う1本でも、1か月で新しくすることが大切です。

電動歯ブラシは研究上たしかに有利ですが、毎日使える手用の歯ブラシでも、毛先がきちんと当たれば汚れは落ちます。
値段の高さより、あなたのお口に合っていて、明日も手に取りたくなるかどうかで決めてください。

お口の健康は、人生の「おいしい」を守ること。
まずは今夜、今使っている歯ブラシを裏返して、毛先が広がっていないか見てみてください。
それだけで十分偉いです!