正直に言います。私、めちゃくちゃケチです。
スーパーで歯ブラシを買うとき、つい100円台のものをカゴに入れてしまう。「どうせ消耗品だし、ちゃんと磨けば同じでしょ」と自分に言い聞かせて、何年も過ごしてきました。
でも、ある日ふと気づいたんです。「あれ、私、歯科衛生士なのに自分の歯ブラシに全然こだわっていない……」
歯科衛生士歴18年、延べ5万人以上のお口のケアに関わってきた柚木 葉子です。20代の頃、パティシエ見習いとして修行中に1年で8本の虫歯をつくってしまったという、苦い過去を持っています。だからこそ、「食べる楽しみを守る」ことに命をかけているわけですが……自分の歯ブラシ代はなるべく節約したいという、矛盾を抱えた人間でもあります(笑)。
今回は、そんなケチな歯科衛生士の私が本気で「高い歯ブラシと安い歯ブラシ、何が違うの?」を検証してみました。結論から言うと、「300円の差」には、ちゃんと理由がありました。でも、だからといって「高い=絶対いい」とも言い切れないんです。そのあたり、正直にお伝えしますね。
目次
まずは「安い・高い」の定義を整理しよう
ドラッグストアやスーパーに並ぶ歯ブラシの価格帯は、大きく分けると次のようになります。
| 価格帯 | 主な商品例 | 入手場所 |
|---|---|---|
| 〜100円 | 100均の歯ブラシ、スーパーのPB品 | 100均・スーパー |
| 100〜300円 | クリニカ、ピュオーラ、ガム など | ドラッグストア全般 |
| 300〜500円 | システマ、ルシェロ、TePe など | 歯科医院・薬局・ネット |
| 500円以上 | クラプロックス(約800円)、MISOKA(約1,000円) | 歯科医院・通販など |
今回の記事で比較するのは、「100円台の安い歯ブラシ」と「300〜400円台の歯科専売品や高機能ブラシ」の差。ちょうど1本あたり200〜300円の差が生まれる、この価格帯の違いが今日のテーマです。
「たった300円じゃないか」と思いましたか? 私もそう思っていました。でも、月1回交換するとなれば年間で3,600円の差。10年続ければ36,000円。……うん、やっぱり気になりますよね(ケチ魂が騒ぐ)。
実際に何が違うの?価格差の正体を解剖する
「高い歯ブラシはなんとなく良さそう」という感覚はあっても、具体的に何が違うのか、ちゃんと説明できる方は意外と少ないんです。価格差の正体は、主に以下の3つです。
①毛の素材と植毛の密度
安い歯ブラシの毛は、一般的なナイロン素材が使われています。これ自体は決して悪くはなく、吸水性が低くて乾きやすいので、細菌の繁殖を抑えやすいというメリットもあります。
一方、高い歯ブラシになると毛の素材や加工が変わってきます。たとえば、歯科医師が愛用することで有名なスイス生まれの「クラプロックス」は、独自のCUREN®繊維という超極細のマイクロファイバー毛を使用。さらに驚くのがその植毛数で、一般的な歯ブラシが約600本程度なのに対して、クラプロックスはなんと5,000本以上もの毛が植えられています。
これはお料理に例えると、粗いスポンジと細かいスポンジの違い、といえばイメージしやすいでしょうか。細かい繊維がびっしり集まっているほうが、細かい隙間の汚れまで拭き取れますよね。歯の表面と歯茎の間の溝(歯と歯茎の隙間ポケット)に入り込む力も、毛の細さや密度によって変わってくるんです。
②毛先の形状と加工の精度
次に注目したいのが、毛先の形状です。安い歯ブラシの多くはシンプルなフラット毛が中心。それに対して、価格が上がるにつれて「テーパー毛」「先端極細毛(スーパーテーパード毛)」「二段植毛」など、より複雑で精度の高い設計になっていきます。
- テーパー毛:先端に向かって毛が細くなる形状。歯と歯茎の隙間ポケットに入りやすく、歯周病が気になる方に向いています
- 二段植毛:長さの異なる毛束が2段構造になっていて、歯の表面と歯の間を同時にケアできます
- 先端極細毛:名前の通り毛先が極限まで細い設計で、歯茎へのやさしさと溝への到達性が高い
さらに、毛先の「丸め加工(ラウンド処理)」の精度も価格に影響しています。高いブラシほど、毛先の一本一本が丁寧に丸く仕上げられており、歯茎を傷つけにくくなっています。
③ヘッドやネックの設計の細かさ
価格が高い歯ブラシは、ヘッド(毛が生えている部分)の薄さや形状にも工夫が凝らされています。薄型ヘッドは口の奥まで届きやすく、奥歯の磨き残しを減らすことができます。
また、ネック(ヘッドとグリップをつなぐ部分)が適度にしなる設計になっているものもあり、これが「ブラッシング圧の調整」に一役買っています。力をかけすぎると自然にネックが曲がってクッションになる仕組みで、歯茎への過度なダメージを防いでくれるんです。
私が実際に使い比べてみた正直な感想
「理屈はわかったけど、使ってみてどう感じるの?」というのが一番知りたいところですよね。ということで、ケチな私が実際に使い比べてみました。
安い歯ブラシを使ってみた
今回選んだのは、ドラッグストアで定番の100円台のフラット毛タイプ。毎日の磨き慣れた感触で、「これ、特に不満はないんだよなあ」というのが最初の印象です。シャキシャキ磨けて爽快感もある。
ただ、磨いた後に鏡で確認すると、奥歯の裏側と歯と歯茎の境目に磨き残しが目立ちました。ヘッドが少し大きめなので奥に入りにくく、また毛がフラットなので溝にはなかなか届いてくれない。「磨いた気持ち」にはなれるんですけど、「磨けた」かどうかは別の話かな、というのが正直なところです。
高い歯ブラシ(歯科専売品)を使ってみた
次に試したのは、歯科医師が愛用率1位を誇るルシェロ(約300円)と、クラプロックス(約800円)の2本。
ルシェロは、ヘッドがコンパクトで奥歯まで届きやすく、毛先が歯茎の境目にすうっと入る感覚があります。磨き心地はまるで「細い筆で丁寧に掃除している」ような感じ。使い始めてすぐに「あ、これは違う」と思いました。
クラプロックスにいたっては、もう別次元。あれだけの毛量がびっしりあるので、磨いているというよりも「歯が拭かれていく」感覚。力を入れなくても、歯の表面がすーっとツルツルになっていくんです。「歯を磨くのが楽しい!」という感覚を久しぶりに味わいました。
ただ、率直に言うと、クラプロックスの800円という価格が毎月続くかというと……正直キツいです(ケチ心が顔を出す)。一方のルシェロは300円台という価格でこの効果なら、コスパ的にも納得感があります。
高い歯ブラシは本当に「コスパが悪い」のか?1ヶ月で計算してみた
「高い歯ブラシを毎月買い替えるなんてもったいない!」と思っている方、ちょっと待ってください。コスパを正しく考えるには、年間コストで比較する必要があります。
| タイプ | 価格(1本) | 年間コスト(12本分) |
|---|---|---|
| 安い歯ブラシ | 約100円 | 約1,200円 |
| 普通の歯ブラシ | 約200円 | 約2,400円 |
| 歯科専売品(ルシェロ等) | 約300〜350円 | 約3,600〜4,200円 |
| 高級ブラシ(クラプロックス等) | 約800円〜 | 約9,600円〜 |
歯科専売品の場合、安いものとの差額は年間で約2,400円。1日に換算すると約6〜7円の差です。
「たった6円の差で虫歯1本分の治療費を節約できるかもしれない」と考えると、どうでしょう。虫歯の治療費は、保険診療でも数千円〜数万円かかります。歯周病の治療となればさらに費用がかかり、通院回数も増えます。
歯ブラシに毎月プラス200円かけることで、年に1〜2回の歯科通院を減らせるかもしれないなら……それはむしろ「節約」じゃないか、と気づいてしまったんです。ケチな私が言うんだから、かなり信憑性があると思います(笑)。
ちなみに、日本訪問歯科協会の口腔ケアマニュアルでも、歯ブラシは植毛部の密度や毛の質によって清掃効果に差が出ることが解説されています。道具選びが口腔ケアの基本であることは、専門家の間でも共通認識なんです。
「高い歯ブラシにすべき人」と「安い歯ブラシでOKな人」の違い
「じゃあ全員、高い歯ブラシにすればいいの?」……と言いたいところですが、実はそうでもないんです。正論を言うだけでは誰の心にも届かない、というのを新人時代の苦い経験から学んだ私としては、「あなたの状況に合った選択肢」を提示することが大事だと思っています。
今すぐ高い歯ブラシにした方がいい人
- 歯科検診で磨き残しや歯茎の腫れを指摘されることが多い
- 奥歯が磨きにくいと感じている
- 歯周病が気になっている(歯茎から出血がある)
- 歯ブラシを変えたら口の中がすっきりしてほしい
- 過去に虫歯の経験があり、再発を本気で防ぎたい
安い歯ブラシでも十分な人
- 歯科検診で毎回「きれいに磨けていますね」と言われる
- 正しいブラッシング方法をマスターしていて、毎日丁寧に磨けている
- フロスや歯間ブラシも併用できている
- 今の歯ブラシで磨き残しを感じていない
磨き残しがないかどうかを簡単にチェックする方法として、薬局で売っている歯垢染め出し液(プラークチェッカー)を使ってみるのがおすすめです。赤く染まる部分が多かったら、道具を見直すサインかもしれません。
また、毛先の広がりにも注目してみてください。毛先が少し開いた歯ブラシは歯垢除去率が約20%低下し、完全に広がった状態では最大40%も下がるという研究があります。「まだ使える」と思っていても、歯ブラシは1ヶ月を目安に交換することが大切です。詳しくは、歯科技工のプロによる歯ブラシ交換時期の解説(株式会社シケン)に分かりやすくまとめられています。
結局、何を選べばいいの?タイプ別・正直なおすすめ
「じゃあ具体的に何を買えばいいの?」というところまでお伝えするのが私のスタイルです。正直なおすすめをまとめます。
「とにかくコスパよく、確かな効果が欲しい」人には→ルシェロ(ルシェロB-10またはP-10)
歯科医師が選ぶ歯ブラシランキングで1位に輝き続けている歯科専売品です。価格は275〜350円と手頃で、テーパード毛が歯と歯茎の隙間ポケットにしっかり届く優秀な一本。ネット通販でも購入できます。
「歯茎が弱い、出血が気になる」人には→システマ ハブラシ(ライオン)
歯科医院でも定番のブランドで、ドラッグストアでも入手しやすい価格帯(200〜300円台)が魅力。毛が極細のスーパーテーパード毛で、歯と歯茎の境目をやさしくケアしてくれます。
「磨き心地を最優先したい、歯へのご褒美をあげたい」人には→クラプロックス
800円超えという価格は正直気合いが必要ですが、圧倒的な植毛数と使い心地は本物。毎日の歯磨きがちょっと楽しみになります。1〜2ヶ月に1度、自分へのご褒美感覚で試してみてはいかがでしょうか。
「まず1ステップ上げたい、でもドラッグストアで買いたい」人には→G・U・M デンタルブラシ(サンスター)
日本歯科医師会推薦で、スーパーやドラッグストアでも手に入ります。200円台で歯科クオリティを味わえる、入門としてはとてもおすすめの一本です。
まとめ
「高い歯ブラシと安い歯ブラシ、1本300円の差はどこに出るの?」という問いに対する答えをまとめます。
- 価格差の正体は「毛の密度・素材」「毛先の形状と精度」「ヘッド・ネックの設計」の3点にある
- 高い歯ブラシは歯と歯茎の隙間ポケットへの到達性や清掃力が高く、歯茎への負担も少ない傾向がある
- 年間に換算すると差額は2,000〜3,000円程度で、虫歯治療の費用と比べれば十分にコスパが良い
- ただし「高い=全員に向いている」ではなく、自分の口の状態に合わせた選択が大切
- 歯ブラシは1ヶ月に1回の交換が基本。毛先が開いたら即交換を
正直に言うと、今回の検証で私自身も考えが変わりました。ケチな私でも、1日6〜7円の差なら歯科専売品に変えようと決意した次第です。歯は一生のお付き合い。少しの投資が、10年後・20年後の「おいしい」を守ってくれると思えば、高くはないですよね。
まずは今夜、使っている歯ブラシを裏から見てみてください。毛先がはみ出ていたら、明日にでも新しいものに替えてみましょう。それだけで十分、今日の自分は偉いです!