記事単価アップの最短距離!取材記事ライティングのテクニックを身につけよう

記事単価アップの最短距離!取材記事ライティングのテクニックを身につけよう

取材記事案件(インタビュー)は、一般的な記事案件と比較して報酬が数倍から十数倍に設定されています。ライターとしてステップアップを目指すためにも、取材記事案件へのチャレンジをおすすめします。本記事では、取材記事経験のない方に向けて、取材記事を執筆するために必要な能力とテクニックに加え、どのようにして取材記事案件を取得するのかについて解説します。

取材記事案件のメリット

取材記事案件には、他の記事制作案件にはないメリットが数多くあります。その中でも、代表的なものが以下の3つとなります。

  1. 記事単価が高い

    私は年間で50本ほどの取材記事を執筆していますが、その記事単価は(文字数や専門度に応じて)3〜5万円が相場となっています。最近はWeb会議システムを使ったオンライン取材も増えましたが、現地におもむく対面取材出張が発生することもあります。
    一般的に、オンラインよりも対面取材の方が拘束時間も長くなるため、報酬が高くなる傾向があります。ちなみに、対面取材の場合は写真撮影もあわせて依頼されるケースもあります。

  2. 継続案件が増える
    取材ができるライターは貴重なため、発注側も信頼できるライターは確保したいと考えています。取材案件を請け、それを問題なく納品すれば信頼関係を築くことができ、その後の継続受注につながる可能性が高まります。


  3. ネットワークが広がる
    取材案件は、取材を受ける側(インタビュイー)が所属する企業の上司、広報担当、広告代理店、メディアの編集者、カメラマンなど、さまざまな人が現場に集まります。取材時の雰囲気がよく、また完成した記事のクオリティも十分なものであれば、それらの人たちからも高い信頼を得ることができます。
    そうなれば、広告代理店の方から他の案件を依頼されたり、カメラマンが必要な時に相談したりなど、ネットワークの拡大も期待できます。

取材記事の報酬が高い理由

同じ文字数であれば、取材記事は一般的な記事制作に比べて、記事単価は高めに設定されています。なぜ、単価が高いのか。それの理由は、主に以下の3つとなります。

企業案件が多い

取材記事として特に多いのは、企業の商品やサービスについて開発者やユーザーを取材する事例(体験)記事です。これらは、広報PRの予算が使われるので、一般的なWebメディアの掲載記事と比べると予算枠が大きくなります。
企業としての利益とブランド向上に直結するものなので、発注する側も単価を高めに設定してでも質の高いライターを確保したいと考える傾向があります。

取材に対応できるライターが少ない

近年は、ブランド価値を高めるために自社のWebサイトを充実させ、オウンドメディア化する企業が増えています。それに比例して、ユーザを取材した導入事例記事の需要も高まっています。
しかし、顧客の取材を任せられるライターが確保できず、十分な記事の数が集められない企業も少なくありません。ライターを確保するため、高い単価を提示する必要があるのです。

記事の公開までに工数がかかる

たとえば、クライアントが存在する取材記事は、企画から公開まで図1のような手順を踏みます(水色がライターの関わるパートです)。
複数の担当者がチェックすることも多く、修正の指示が二転三転するケースもあります。企画から記事の公開までに時間と工数がかかるので、一般的な記事と比較すると記事単価は高めに設定されます。

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企業が求める取材ライター像

執筆できるライターは世に溢れていますが、取材を依頼できるレベルのライターはかなり少ないのが実情です。では、発注元となる企業はライターにどのような資質を求めているのでしょうか。具体的な3つの例を紹介します。

  • 一定レベル以上のTPOが守れる
    取材記事では、発注元の顧客をインタビューするケースが多々あります。その現場で、ライターが失礼な態度をすると顧客との関係が崩れてしまう可能性もあります。そのため、顧客とのやり取りを安心して任せられるレベルのTPOが守れなくてはなりません。

  • スケジュールを厳守できる
    お仕事として請ける以上、スケジュール厳守は当然です。ただし、取材記事ではそれがより厳密かつ厳格になります。たとえば、新商品の紹介記事なら、広報担当だけではなく事業部長や取締役まで内容をチェックする可能性が発生します。もし、記事の納品が1日遅れてしまえば、それらの方々のスケジュールにも影響します。また、新商品のリリースにあわせて公開する記事なら、数時間の遅れが致命的になるケースもあります。

  • コミュニケーション能力が高い
    特にBtoBの企業案件では、ほとんどのインタビュイーが取材に慣れていない場合が多いです。そのような方々から言葉を引き出すには、高いコミュニケーション能力が必須です。個人的に取材ライターは、文章力よりもコミュニケーション能力の方が重要だと感じています。その点では、ライター経験よりも、たとえば営業経験を持つ方の方が向いているかもしれません。

取材ライティングに必要なテクニック

ここからは、私が取材ライティングをおこなう際に実践しているテクニックを5つ紹介します。なお、これらはあくまでも私個人のスタイルなので、その点ご了承ください。

  1. 取材案件は事前の下調べが9割
    企業案件の取材記事は、事前に構成案や質問項目が決まっているケースがほとんどです。取材前に、十分に下調べをおこない、どのような質問をすれば、どのような回答が得られるか、おおよその見込みをしておけば、現場で慌てることはありません。もし、想定外の回答が来た場合は、「私はこういうことかと思っていたのですが、違うんですね。ちなみに、その理由はなんでしょう?」などと話を広げていきましょう。そうすれば、より興味深い話が引き出せるかもしれません。
  2. わからないことは必ず確認する

    取材現場でもっともやってはいけないことのひとつが、知ったかぶりで話を進めてしまうことです。
    内容が専門的すぎて事前の調査でもわからない場合は、取り繕わずに「調べたけどわからなかったので、教えてもらえますか?」と伝えましょう。
    「わからないと伝えるのは相手に失礼ではないか」と思う方もいるかもしれません。ですが、「調べた上でわからなかった」と伝えて、それを失礼だと受け取られることは、まずありません。むしろ、わかったふりで間違った内容を執筆してしまう方が、ライターとして失礼にあたる行為だといえます。

  3. 相手の話したことを書くのではなく伝えたいことを書く
    取材記事でやりがちなミスは、取材相手が話した内容をそのまま記事にすることです。前述したように、インタビュイーは語りのプロではありません。本当はこう伝えたかったのに、言葉が出てこなくて表現があやふやになるケースも少なくありません。そのため、相手の話した言葉をそのまま記事にするのではなく、本当に伝えたかった内容を汲み取って、伝えたい言葉に変換してあげる作業が必要です。

  4. 録音データは保険として利用する
    取材時には、会話内容を必ず録音します。しかし、実際に取材記事を書く際、録音データを聞き直すケースはまれです。これは私だけではなく、多くのライターが録音データを聞き返すことなく、現場で書いたメモをもとに記事を執筆しています。その理由は工数の削減です。音声データをテキストに起こす作業は、大変な労力と時間がかかります。特にスケジュールが厳しい場合、テキスト起こしをしていると、時間の余裕がなくなってしまいます。
    私の経験上、テキスト起こしに時間をかけるより、執筆と推敲に時間をかけた方が、いい記事となる傾向が高いと感じています。録音データは、あやふやな部分や不明瞭な部分の確認用と割り切った方がよいと考えています。なお、近年では自動で音声をテキスト化してくれるサービスも増えているので、それらを利用するのも手段のひとつです。

  5. 取材案件は人と直接会って獲得する
    本記事を読む方がもっとも気になるポイントは「どうすれば取材案件を獲得できるのか」でしょう。
    前述したように、取材案件は発注側からの「信頼」が欠かせません。その信頼とは、実績を積み重ねて得られる「文章力・取材力」に加え、会う人に不愉快な印象を与えない「礼儀・マナー・コミュニケーション力」によって得られるものもあります。
    前者は相応の経験と実績が必要ですが、後者は経験や実績がなくても実際に会うことでアピールできる可能性があります。コロナ禍もひと段落した現在は、オフラインの勉強会やセミナーも増えてきました。そこには、取材を任せられるライターを求めてやってきた、企業の広報担当が参加しているかもしれません。案件を多数抱えていてヘルプを探しているライターがいるかもしれません。そこで「この人なら自分の顧客に面会させても大丈夫だ」と信頼を得ることができれば、たとえ取材が未経験であっても、依頼が来る可能性は十分にあります。

取材能力を獲得し、ライターとしての価値を向上しよう

取材案件の実績を積み上げ信頼が増せば、企業の会社案内やアニュアルレポートなどに使用されるトップインタビューまで任されるようになります。そのレベルになれば、報酬も大きく跳ね上がります。
今後、ChatGPTをはじめとするAIが発達していけば、単に内容をまとめるだけのライティングは需要も単価も下がる一方となる可能性が高いことでしょう。しかし、取材までAIが対応するのは、まだまだ相当な時間がかかると思われます。
今後、ライターとして長く活躍するためには、取材能力の獲得は不可欠だと考えます。見知らぬ相手を取材するのは不安が多いとは思いますが、失敗を恐れず、もしチャンスがあるのなら積極的にチャレンジしてみてください。





 

著者プロフィール

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小関 匡(こせき きょう)
IT、Web、デザイン系のライター兼書籍編集者 。編集実績例「クリエイターのための権利の本」(ボーンデジタル)「鬼フィードバック デザインのチカラは“ダメ出し"で育つ」(MdN)他。ライティングはマスメデイア系より企業のオウンドメディアが主。日本酒好きなれどダイエット中なので節酒中。ちょっとだけ競馬を嗜んでいます。青森県出身、神奈川県在住。

 

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