ライターにとっての「読書の効能」を考えてみました

ライターにとっての「読書の効能」を考えてみました

最近、私は自分の読書量が減っているので不安になっています。

もちろん、ライティングのために日々沢山の文章を読んではいるのですが、それは情報収集のための資料として読んでいるだけなのですね。ですからそれは、文体や表現方法など無視して情報のみを抽出する作業であり、読書不足を補える性質のものではないと考えているのです。

このように文章自体を味わって楽しんだり、あるいは感心したりしながら読む読書の量が減ると、なにやら自分の文章が荒れてくるような気がして不安になります。

そこで今回は、ライターにとっての読書の効能とはなんだろう、ということを考えてみました。

たくさん書いたら文章は上達するのか

「文章力を上達させるためにはとにかくたくさん書くことだ」と主張されている人は多いですが、やみくもに書いても文章はなかなか上達しないのではないかと私は考えています。

確かにたくさん書くことで、書くことには慣れますから速度は上がるでしょう。しかし、いくらたくさん書いていても、それがもしかすると分かり難い文章や文法的におかしな文章、あるいは稚拙な表現の文章かもしれないと気付けないままであれば、文章が上達するとは思えません。

実際ネット上でも、多くの投稿が続けられてきたブログであるにもかかわらず、稚拙な文章が書かれているのをよく見かけます。

そんなとき私は、「ああ、このブログを書いている人は普段、読書をしていないのだろうなぁ」と思ってしまうと同時に、自分は大丈夫だろうか? と不安になるのです。

おかしな文章に気付くための読書

たくさん書いて文章力を磨くのであれば、やはりどのような文章が優れた文章であるのかを知っていなければならないでしょう。といっても、理屈で知っている必要はありません。むしろ、感覚的に知っている必要があると思うのです。

そのためには、普段から優れた文章に大量に接している必要があるのですね。そこで、読書をすることが大切になってきます。

プロが書いてプロが編集してプロが校閲した本の文章に多く触れることで、読みやすい文章、文法的に正しい文章、豊かな表現手法、論理的な展開などを体に染みこませることができれば、自分の文章を推敲したときに理屈ではなく感覚的に「あ、ここはおかしいな」「ここはわかりにくいな」といったことに気付きやすくなるはずです。

表現力を磨くための読書

一人で文章を書き続けているだけではなかなか成長しにくいものだなぁ、と思っているものに表現力があります。この表現力というものには二つあると考えています。

一つは、情報を正確に伝えるための表現力です。つまり、読み手が書き手の伝えたいことを正確に理解できる文章を書く力ですね。論理的であることや、文法的に正しいことが求められます。

そしてもう一つは、読み手の創造力や感情を揺さぶる表現力です。単に情報が伝わるのではなく、驚きや共感、焦燥感といった感情を引き起こさせる文章を書く力です。このような表現力はなにも文芸の世界に限ったものではありません。例えばECサイトに掲載される商品紹介の文章でも、読者の共感を得て購買意欲といった感情を揺さぶるために必要となります。

これらの表現力を高めるためには、やはり普段からたくさん読んで、「この表現、巧みだなぁ」とか「なるほど、そんな風に表現すれば効果的なのか」と自分自身が感心できる表現にどれだけ多く出会って刺激を受けているか、ということが大切になってくるでしょう。

知見を広めるための読書

ライターにとっての読書の効能は、文章力を磨く以外にもあります。

それは、知識を増やしたり、考え方あるいはものの見方を柔軟にしたりするという効能です。

知識は説明するまでもありませんね。本を読む時に、常に内容を覚えようとして読む必要はありませんが、どんな本でも1冊読み終えたときには、何かしらの知識が増えているはずです。

もう一つの、考え方が柔軟になるというのはどのようなことでしょうか。これはより多方面から物事を捉えられるようになることだとも言い換えることができます。

例えばデフレのとらえ方にしても、異なる著者の本を読むことで、デフレを貨幣現象として金融政策で改善できるという考えと、デフレを有効需要不足によるものだとして財政出動が必要だという考え方の両方から捉えることができるようになります。

良く使われている喩えになってしまいますが、考え方を柔軟にするということは、丸い輪郭だから球体だと思っていた物体が、実は視点を変えたら円柱だった、というようなとらえ方を、さまざまな事象に対して応用できるようにするということですね。

名作を読む必要はない

それでは、どのような本を読めば良いのでしょうか。私なりの結論を述べさせていただければ、それは、「自分が面白そうだと思える本」です。

よく文章を磨くには名作を読めとか、誰々さんの著書を読めと主張される方が多いですが、私は賛成できません。いくら名作・名著として評判が高い本でも、自分が面白いと思えない、興味を持てないという本であれば、頑張って読んでも身につくのは忍耐力くらいのものでしょう。

また、皆が同じ名作を読んで同じ文体を目指す必要もありません。それにそもそも、どのような文章が優れた文章であるかは、人によって評価が異なってくるはずです。

自分にとって読みやすい、あるいは面白い、ワクワクできる、驚ける、感動できるというように、心を揺さぶられる文章でなければ、自分の文章に対する感性を磨くことなどできませんし、自分の文章に影響など与えられないのではないでしょうか。

ですから私は、文章力を高める読書においては、自分が「面白そうだ」あるいは「興味を持てそうだ」、と思える本をどんどん読んでいけば良いと考えています。

本棚で自分の得意分野を知る

自分が「面白そうだ」あるいは「興味を持てそうだ」、と思える本を選んで読んでいくと、文章を磨くほかにも効能があります。それは、自分の得意分野が見えてくるということです。

本棚が一杯になったら、一度眺めてみてください。読んできた本にはどんなテーマの傾向や偏りがあるでしょうか。経済関係ですか、社会問題ですか、あるいはサブカルチャーかもしれませんし、グルメものが多いかも知れませんね。スポーツものばかり読んでいるかもしれませんし、財テク関係が多いかも知れません。

どうやら、本棚には、自分の関心の高い分野や得意分野が示されているようです。読書には、そんな効能もあるのですね。

ですから皆さん、読書は自由に楽しみましょう。

 

著者プロフィール

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地蔵重樹(ハンドルネーム:しげぞう)
ライター。ブックライティングを中心に、Webマガジンや企業のオウンドメディア、リードナーチャリング用のe-bookなどを執筆している。オカルトから経済・テクノロジーまで守備範囲が広いが、グルメとスポーツのお仕事はお断りしている。趣味は読書と、愛猫と一緒にソファーで昼寝すること。

 

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