時代とともに変わる取材の姿、これからのライターに求められるスキルとは?

時代とともに変わる取材の姿、これからのライターに求められるスキルとは?

新しいテクノロジーの登場や技術開発により、従来の仕事のやり方ががらりと変わってしまうのはどの業界でもよくある話。実際に、広告・出版業界でもこうした動きは何度もありました。
最近になって、またこうした変化を予見させるニュースがあったのでご紹介しましょう。近い将来、ライターに求められるスキルは大きく変化するかもしれません。

スイスで登場した、新しいジャーナリストのカタチ

テレビ取材というと、これまでは大型のカメラを肩に担ぎ、照明やマイクを用意して臨むというスタイルが一般的でした。

しかし、スイス・ジュネーブ地方の地方テレビ局「Léman Bleu」では、こうしたプロ用のカメラ機材の使用をやめ、撮影用の機材をiPhoneに切り替えると発表したのです。

その様子を公開したのが以下のムービーです。レポーターたちがiPhoneを手に持ち、自撮り棒やマイクを活用しながらインタビューを行う姿が収められています。

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Léman Bleu Switzerland goes LiveU

確かにiPhoneのカメラ性能の発展は目覚ましく、プロのカメラマンからも「侮れない」という声があがるほど。しかし、それでもこれまで使用されていた機材を廃止するという決定は、テレビ業界だけでなく、さまざまな業界から大きな驚きを持って受け入れられました。

Léman Bleuのディレクターであるローラン・ケラー氏によると、この決定は『「軽さ」「迅速な対応」「素早いコンテンツの提供」などの要素を追求した結果』なのだとか。重たい機材や複数のスタッフを用意する従来のスタイルよりも、iPhone一台のほうが取り回しやすいのは明らかで、プロ用の機材ほどではないにせよ必要充分な画質を確保することも可能です。また、テレビ局側からすれば、機材費を大幅におさえられるというメリットも見逃せないでしょう。

ウェブライティング業界にも変化の波が?

今回ご紹介したのはテレビの例ですが、こうした変化の波は、私たちが携わるウェブライティングの世界にも訪れる可能性があります。

もともとライターには出版社や広告業界での編集経験者も多く、デザイナーやカメラマン、スタイリストなど多彩なスキルを持っている人も少なくありません。こうした経験を生かし、ライティングと写真・動画編集・デザインなどさまざまな仕事をワンストップで受けるスタイルが増えていています。

また、最近ではテレワークなど多様な働き方が一般化したことで、制作スタッフが東京以外の地方や、場合によっては海外に住んでいるというケースも珍しくありません。
打ち合わせをするにしても直接対面するのではなく、Skypeやメールで用が済んでしまうため、同じ人にいろいろな作業を依頼できるほうがスタッフコントロールの手間を省くことができるという利点もあります。こうした状況を踏まえると、一人でさまざまなスキルを持っている人が有利になる傾向は、今後ますます加速していくでしょう。

もちろん、高い専門性を持っていれば、ライティングだけでご飯を食べることもできるかもしれません。

しかし、それはあくまで誰にも真似できないような高い専門性を持っていればの話。

アルファブロガーのようなセミプロや、二次情報記事も増えている現在の状況では、ライターへの参入障壁はますます低下していくでしょう。そうなったとき「ちょっとうまい文章が書ける」程度では、仕事を確保するのは難しくなってくるかもしれません。

これからは「スキルの幅広さ」が生き残るカギになる?

ライターにとっては少し耳が痛い話になってしまいましたが、こうした状況のなかでも生き残るためには、「Léman Bleu」のレポーターのような幅広いクリエーションを一人でこなしていく力が求められます。

ローラン・ケラー氏は、インタビューのなかで『映像品質の変化や、映像・音声産業の職業の将来に対するためらいが存在することも理解しているつもり』として、プロの技術や成果物の品質に対して、ある程度の懸念を示しています。
しかし、それ以上に、スピードやコスト感覚が求められる場面が増えているのは、日々ライティング業務に携わるみなさんも実感しているところではないでしょうか。

今後、ライターにとってはライティングスキルだけでなく、ますます多様な技術が求められることになりそうです。


参考:

 

著者プロフィール

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鈴木圭
イタリア・ミラノ在住。広告プロダクション、出版社などを経てフリーライターに。Webマーケティングや広告デザインのほか、海外旅行やイタリア関連のコンテンツへ記事を書いている。イタリア、ヨーロッパならではの自由で面白いマーケティング事例を目にすると、ついつい楽しくなってしまう。趣味はキリム集めと、旅行先の市場でへんな食べ物を探すこと。

 

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