ライターがクライアントに「見つけてもらう」ために必要なこと

ライターがクライアントに「見つけてもらう」ために必要なこと

「いやーたまたま知り合いから声をかけてもらってね」「交流会で知り合った人から、仕事もらったんだ!」――そんな同業者との会話を、内心「いいなぁ……」「なんでアイツだけ……」と、うらやむ気持ちで聞いていた経験のあるフリーライターの方は、かなり多いのではないでしょうか?

仕事につながる人脈。コネクション。「自分にもそれさえあれば!」と、頭を抱えたくなる気持ちもわかります。しかしひとつだけ言えることは、誰しもはじめからそんなもの持っていないのが当たり前、ということなんですよね。では、どうすればいいのか。フリーライターである私たちが、クライアントのみなさんに「見つけてもらう」ために必要なことは何なのか。

人との出会いやご縁に“絶対”はありません。しかし、少しでも仕事につなげるために、自分自身ができる心構えと努力について、今回はお伝えしたいと思います。

他人はアナタに1mmも興味がないことを大前提に考える

「人脈」が欲しくて、著名な方のトークイベントに参加し、名刺交換の行列にいそいそと並ぶ。あちこちの交流会に足しげく通って、とにかく名刺を交換しまくる。私たちはついつい、そうした安易な方法を選びがちです。そう、それは「安易」すぎるんです。例えその場でお互いの会話が盛り上がって、社交辞令的に「じゃあ何かお願いできることがあればご連絡しますね!」などと、いい感じの会話が交わせたとしても。ほくほくするのはまだ早すぎます。次どこかで会ったとき、その人はかなりの確率でこう言うはずなんです。

「ああ、ええとどこでお会いしたんでしたっけ? そうか、あのとき。ハイハイ。それで、ええと……確かフリーライターさんなんですよね。最近どんなお仕事されてるんですか?」

そもそも、私たちが忘れてはいけない大前提。ほとんどのケースにおいて、他人はアナタに1mmも興味がないんです。その人が特別に冷たいからとか、忘れっぽいとかいうことではありません。「大多数の人間は他人にそれほど興味がない」ということです。

試しに、あなたが交換した名刺をずらりと並べて、一人ひとりの顔を思い浮かべてみてください。顔の次は、その人がやっている仕事の内容を。その次は、その日話したことを……。いかがでしょうか。一体どれだけの情報を、思い出せますか? 自分だったら、たった一度名刺交換をしただけの、なんだかよく覚えていない相手に「仕事を発注しよう!」と思いますか?

人脈は、そんなに簡単にできません。ですから新しいクライアントを見つけて仕事を得るためには、「そもそも自分に全く興味がない相手」をどうにか振り向かせて、興味関心を持ってもらって、信頼関係を作るという3つのハードルを越えなければならないんです。

そのことを、大前提として肝に銘じておきたいところです。

興味関心の「突破口」は狭ければせまいほど成功する

ではまず、そもそも自分に興味がない相手を「振り向かせる」ためにはどうしたらいいのかを考えていきましょう。これは交流会などでよく交わされる会話です。

「おお、フリーライターさんなんですね? どんなテーマがお得意なんですか?」

「ええと、ファッションとか旅とか……あとライフスタイル系とかですね。WEBも紙もやってます。最近働き方なんかにも興味があるんですよね。でもまあ、基本的に何でも書きますよ、ハハハ」

さて、いかがですか? 仕事が欲しいフリーライターの自己紹介としては、0点ですよね。もう一度いいますが、「相手はあなたに1mmも興味がない」んです。この自己紹介のどこに、興味を持ってもらえるポイントがあるのでしょうか。せっかくの機会なので「あれも、これも」とアピールしたいのはわかりますが、全体的にぼんやりしてしまい、この人がどんなライターなのかがちっともわかりませんよね。

興味を少しでも持ってもらうために重要なのは、「ピンポイントな突破口」です。それが尖っていればいるほど、相手に深く突き刺すことができる。間口は広くしてはダメです。厳選して絞り込むことをオススメします。

「どんなジャンルがお得意なんですか?」

「30代OL向けにぶっちゃけ恋愛コラムを書いているんですけど…」

「なんですかそれ!(笑) 詳しく教えてください!」 

「お仕事としてはどんなものが多いんですか?」

「ベンチャー企業やスタートアップの、採用関係のお仕事が多いですね」

「へえ、その業界お詳しいんですか?」

「それだけじゃないよ! ほかにもいろんな仕事やってるよ!」と、内心もどかしく思うこともあるでしょう。わかります。でもそこはグッとこらえて。一度突破口さえ開けば、「恋愛コラムを発注したけど、実はベンチャーに詳しかった」とか「採用の仕事を頼んだけど、恋愛系のコラムが意外とイケた」とか、どうにでも広がっていくものです。(極端な例ですが)

特に「何でも書きます」は、最大のNGワードなので注意してください。

A: 「(あんまり得意ジャンルとかないから)何でも書きます」

B: 「(得意分野はこれだけど、頼まれれば)何でも書きます」

上記二者では、エラい違いがありますよね。「A」のようなライターだと思われてしまうのは避けたいところです。

3秒で送れる「プロフィールシート」が、興味関心を信頼に変える

さて、突破口を狭くせまく設定して、相手にとにかく興味を持ってもらうことができたとします。しかし、ここで終わってしまっては、「ええとフリーライターさんでしたっけ?」という段階にあっという間に逆戻りしてしまいます。その人と会った翌日に、お礼のメールに「プロフィールシート」のようなものを添えてみてください。企業でいうところの「会社案内」的なもの。立派なデザインのものでなくても、ライターとしての経歴や、得意分野、厳選した実績が、A4サイズのPDFに簡潔に収まっているようなもので十分だと思います。

ときどきメールの文面に延々と、自身の経歴や、実績のURLを書き連ねてくる方がいますが、それではあとに残らないのであまり意味がありません。しつこく繰り返しますが、「相手はあなたに1mmも興味がない」ので、そんなにつらつらと文章を書かれても、まず全部読むことはないですよね。わざわざURLにも飛びません。

でもA4サイズのPDFファイルだったら、とりあえず保存してあとで見返すこともできますし、「誰か紹介してほしい」と言われたときにすぐメールで共有することもできます。保存できて、見返すことができて、簡単にシェアできること。その3点を抑えることを意識してみてください。

ここでのポイントは、せっかく持ってもらった興味関心を、「ああちゃんと仕事の実績があるライターさんなんだな」という信頼に変えることです。ここまでクリアしてはじめて、「そういえば●●が得意っていうライターさんがいたな」と、仕事の発生したタイミングで思い出してもらえる可能性が生まれるのです。

前述した通り、人との出会いやご縁に“絶対”はありませんが、人脈やコネクションを築いていくためには、こうした心構えや努力が必要です。交流会の情報を探す前に、まずは「自分がどんなライターと認識されたいのか」を考え、その突破口を探すところからはじめてはいかがでしょうか。

 

著者プロフィール

著者アイコン
大島悠
企業広報を専門にしているフリーランスのライター・編集ディレクター。BtoB専門のデザイン制作会社勤務を経て、2013年に独立。会社案内や採用案内、コーポレートサイト、広報誌、各種パンフレットなどを中心として、企画・編集から取材・ライティングまでを幅広く請け負っている。

 

関連記事