原稿にもツラのよさがある。そのためには漢字を“開く”こと!

原稿にもツラのよさがある。そのためには漢字を“開く”こと!

みなさん、イケメンが好きですよね?

隣の奥さまにいただいた『ねんりん家』のバームクーヘンより好きよ! という方も多いことでしょう。 なぜかツラがよいだけですべてが許されるパワーを持っている。

それがイケメン。凄いですね。

ところで原稿にもツラのよさがあるって、ご存知でしょうか? 今回のお話は、「美しい原稿」を書くためのコツ。

「読めない」漢字の多用は注意!

経験の長いプロのライターさんの原稿ファイルを初めて開く瞬間、 まず感じるのは「美しい」ということです。

その理由として挙げられるのが、 漢字、カタカナ、ひらがなの絶妙な配分バランス。とりわけ漢字のチョイスです。 漢字がいい感じでちりばめられていて、原稿の体裁を美しく整えているのです。

現代の(ほぼすべてと言っていい)物書きは、PCで原稿を書くでしょう。 その際のくせ者が「漢字変換」です。

自分で書けない&読めない漢字も、 あなたの代わりにワードさんがササッと変換してくれます。 「薔薇」とか「檸檬」とか「海鼠」とか、「禍々しい」とか「忌々しき」とか。

間違っちゃいないけど、それって普通使うかなー? という漢字も乱発されます。 「貴男」「貴女」「何故」とか。普通は「あなた」「あなた」「なぜ」ですよね。

迷ったら“開く”習慣を

私は新人ライター時代に「漢字はなるべく開け」と徹底的に叩きこまれました。 雑誌は、誰が手に取って読んでくれるかわからない。 だから誰にとっても「やさしい」原稿を目指すべきなのだ、と。

WEBの記事とて同じだと思います。 誰が通りかかって読んでくれるかわからない。 だからこそ、ちょっとでも“疑わしい”漢字は親切に開いておくべきなのです。

また、雑誌の場合は紙面のビジュアルも魅力のひとつなので、 パッと見た時のツラがまえも大事です。 でも漢字が多いと、何ていうかこう、紙面が黒い……堅苦しい……。

例えば、こんな一文があるとします。

「僕は、貴女の為に彼の崖の上まで薔薇の花を摘みに行く事が出来ます。 何故なら、僕は貴女を愛しているからだ!」

↑ う〜ん、なんだか角張ってますねぇ。 カクカクしてるし、この2行だけ黒いです。 ではこちらは? ↓

「僕は、あなたのためにあの崖の上までバラの花を摘みにいくことができます。 なぜなら、僕はあなたを愛しているからだ!」

どうですか? 字ヅラが変わるだけで、 ちょっと柔らかくて、ロマンチックな雰囲気に感じられません? (私はこんなキザな男は嫌い! という主観は置いといて……)

以上を踏まえて、ターゲットとする読者の属性によって使いわけてもいいでしょう。

若年層やIT系に訴えかけたい記事なら、カタカナを多め。 女性向けに恋愛のこととか書きたいなら、ひらがな多め。 ビジネスや政治のことを語りたいなら、漢字を多め。

こうして配分に気をつけるだけでも、 同じ内容を伝えているのに記事の印象はずいぶん変わると思います。

そうやって使いわけるにせよ、“疑わしい”漢字は開きましょう。

疑わしいってよくわかりません! と判断基準に迷うなら、手書き、です。 原稿用紙に向かって、エンピツを持って、書くんです。 そのときに「貴女」とか「貴方」とか「何故」とか、自分で書きますか?

書かない・書けないなら、“開く”んです!

原稿は、内容が正しくてユニークであることは大前提。 今後はさらに、原稿の「ビジュアルとしての美しさ」も意識してください。

人気者になれる“イケメン”な原稿を目指しましょう!

 

 

著者プロフィール

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藤島由希
早稲田大学を卒業と同時にライターに。以後、フリーエディター、インタビュアーとして女性誌を中心に活動。これまでの執筆媒体は『anan』『Hanako』『GINZA』『BRUTUS』など。現在はWEBディレクターとして活動中。趣味、街歩き。好きな食べ物、おにぎり。

 

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