【意外】世界初のクラウドソーシング案件は航海技術の募集だった

【意外】世界初のクラウドソーシング案件は航海技術の募集だった

ここ数年、日本国内でも急激に市場規模を拡大しているクラウドソーシング。住んでいる場所にとらわれることなく、自分の空き時間を利用して仕事ができるこの業務形態は、最近のノマドワークの浸透とマッチしたこともあり、大きな注目を集めることとなりました。

一般的にはウェブデザインやプログラミング、コンテンツライティング、広告デザインなどのクリエイティブワークに特化したイメージのあるクラウドソーシングですが、もともとはまったく違う、意外な分野の仕事から始まったという事実をご存知でしょうか?

今回はフリーランスで働く方にとっても気になる、クラウドソーシングの歴史についてご紹介しましょう。

クラウドソーシング最古の例は、なんと1714年

世界でもっとも古いクラウドソーシングの例とは、一体どのようなものでしょうか。

実は、その歴史はインターネットが発明されるはるか前、1714年のイギリスにさかのぼるといわれています。

当時、まだ航海技術が未発達だったイギリスでは、正確な経度を測ることができないという理由で、年間数千人もの船乗りたちが命を落としていました。見渡す限りの水平線の中で、自分の正確な位置を把握することは、その先の航海予定を決めるうえでも、また船乗りたちの精神的な安定のためにも重要な意味を持っていたのです。

こうした事態に困ったイギリス政府は、20,000ポンド(現在の価値にして約4.7億ドル)の懸賞金をかけ、解決策を広く国民に求めました。
それ以前も、特定の相手に仕事を依頼するアウトソーシングという業務形態は一般的でしたが、このように不特定多数の人々(群衆)に向けて解決策を求めるというのは初めてのこと。そしてこれが、クラウドソーシングの世界最初の例とされています。

最終的にこの問題を解決したのは、大工の息子であるジョン・ハリソンという若者。彼は真空で密封することで正確な経度や時間を計ることのできる懐中時計「マリーン・クロノメーター」を発明することで見事この問題に応え、懸賞金の20,000ポンドを受け取ったといわれています。

これ以降、フランスではルイ4世が海塩からアルカリを作ることができた者に賞金を出したり、オックスフォード英語辞典が辞書に掲載する単語を選ぶために800人の読者を集めたりと、クラウドソーシングの例はちらほらと散見されるようになりました。

クラウドソーシングといえばインターネットとともに発展していったイメージが強いもの。
しかし、実際にはインターネットが生まれるはるか昔から存在し、人々の注目を集めていたようです。

あの有名なロゴも、実はクラウドソーシングによって決められた?

日本でもっとも古いクラウドソーシングの例は残念ながら明らかになっていませんが、もっとも有名な例といえば、あのトヨタ自動車の例をおいてほかないでしょう。

トヨタロゴといえば「T」の文字とステアリングホイールを模した現在のロゴが有名ですが、それ以前はカタカナで「トヨタ」と書かれたマークが使われていました。そしてそれは、1936年夏に公募され、約27,000点の応募作の中から選ばれたものなのだとか。

面白いのは、それまでは「トヨダ」という社名だったにもかかわらず、選ばれたロゴマークが「トヨタ」であったため、会社名もそれに合わせて変更されたということ。その理由としては「濁点がないほうが音の響きがいい」「画数が8で縁起がいい」「トヨダ(豊田)という人名から離れ、社会的存在の意味を強める」などがあったといわれています。
現在では日本を代表する企業の社名もクラウドソーシングがきっかけで決められていたとは、なんだか少し不思議な感じがしますね。

将来的には、もっと幅広い分野の仕事が登場する?

クリエイティブ関連の仕事が多いイメージだったクラウドソーシングも、歴史を紐解いてみれば航海術やアルカリの生成など、全くの他分野から始まっていたとは興味深いところではないでしょうか。クラウドソーシングは今後も市場を拡大していくことが予想されており、将来的にはもっと幅広い、さまざまな分野の仕事が登場してくるかもしれません。


参考:

 

著者プロフィール

著者アイコン
鈴木圭
イタリア・ミラノ在住。広告プロダクション、出版社などを経てフリーライターに。Webマーケティングや広告デザインのほか、海外旅行やイタリア関連のコンテンツへ記事を書いている。イタリア、ヨーロッパならではの自由で面白いマーケティング事例を目にすると、ついつい楽しくなってしまう。趣味はキリム集めと、旅行先の市場でへんな食べ物を探すこと。

 

関連記事