【売れっ子ライター成功道01】波に乗れ、刃を研げ!プロとして仕事を続けていく秘訣

「名刺をつくったその日からライターである」とは業界でよく言われること。つまり自分で名乗れば、もうライター。特にルールはありません。

ライターの実状がそんな感じだから、「どうすれば(プロの)フリーライターになれますか?」といった質問をたびたび頂戴します。もっともです。繰り返しますが、名刺を作って名乗ればライターです。でも、ライターとして稼ぐようになれなければ(生活できなければ)意味がありませんよね?

だったらプロとして活躍しているライターさんに直接聞いてみよう! その成功の秘訣を。PENYA編集長の藤島が、プロライターのもとを行脚するインタビューシリーズ。第1回目は、作家の島田佳奈さんの登場です。

すでに素地はあった!?漫画家を夢見ていた少女時代

—佳奈さんには公私ともに大変お世話になっているので、改めてインタビューとなると照れくさい感じですが(笑)。そもそもの我々の出会いからさかのぼりましょうか。

島田 私の、初の単行本の発売日に「雑誌でコメンテーターをしてくれませんか?」と連絡をくれたんだよね。

—そうなんですよ! 当時、私は某女性誌の恋愛特集のリサーチで本屋の新刊コーナーをザッピングしておりまして。佳奈さんの『人のオトコを奪る方法』というセンセーショナルなタイトルの本を発見し、「これは……!」とすぐにコンタクトを取らせていただいた次第です。

島田 そうそう、思えばすごいご縁(笑)。あれからもう8年経つんだね。

—そもそもなんですが、佳奈さんは、いつごろ、どんな理由でライターになりたいと思ったんですか? 

島田 OLをしていた22歳のとき、最初は「作家になりたい」と思ったの

—あ、もう最初から、フリーライターというよりは「作家」という方向性を意識されていたんですか。それにしても、会社にお勤めしている22歳の女性が「作家になりたい」と思い立つとは、また突然ですね。

島田 でもね、振り返ってみると、そもそも私は少女漫画を描くのが好きだったのよ。中学生までは別マ(*1)に応募していたからね!(笑)

*  1:『別冊マーガレット』の通称。素人投稿を受け付けていて、漫画家を志す少女たちにとっては激アツの漫画誌。

—なんと! 絵を描くのもお好きだった? 

島田 絵に関しては、当時は自分で「上手い」と思い込んでいただけ。むしろストーリーを創作するのが好きだったの。思いつくままノートに書きとめて。10代の頃から、日記も毎日書いているんだよね。

—いいですねぇ〜。なんと麗しや、文学少女の日々。やはり素地があったのですね! ライターに向いている人。そこ、まさに今の私にとっては大きな課題というか疑問なんです。「物書きになるにはそもそも才能を持って生まれないとダメなのか!?」という……。

島田 才能というか、子どもの頃から日本語にたくさん接してきたか、というのはやっぱり大事なんじゃないかな。当時私は、むしろそれを隠していたの。まわりの友達は夜遊びするような派手な子ばかりだったから、「文学少女ってバレたらダサくて嫌われる?」と(笑)。

—なるほど。

「ワープロ」という新たな武器を手に入れて

島田 そのうち短大に入り、当時はバブル絶頂期だったから、夜遊びがさらに楽しくなって(笑)。キャバクラでバイトして、週末はイベコンをやったりで、「儲かるじゃーん!」と有頂天。

—まぶしいなぁ、バブルって……。文学少女の面影なし!(笑) そんなバブルクイーンが、なぜ22歳で「作家になりたい」と?

島田 その時、新しいノート型のワープロが次々と発売されていて、友達が「買ったばかりだけど、別の新しいのが欲しいからあげる」とワープロをくれたのよ。これもバブルっぽいエピソードだよね(笑)。

—ペンとノートではない、書くための新しいツールが手元に舞い込んだ。それがきっかけ? 

島田 そう。ワープロをちょこちょこと触りはじめたら、昔を思い出して書くのがたまらなく楽しくなっちゃって。「今の私が書きたいものはなんだろう?」と考えたら、自然と恋愛小説になったという。

—少女時代のカンを取り戻したんですね。

島田 派手に夜遊びながらも、森瑶子とかは読んでいたんだけどね。で、自分でもちょこっと小説を書いてみて、会社の同僚にこっそり見せたら「おもしろい! 続きが読みたい!」と言われて、たちまち天狗(笑)。その後、当時の夫(今は離婚)が「趣味にとどめておくのはもったいないのでは?」と背中を押してくれて、ライターズスクールに通うことにしたの。 

—スクールに通うところから! 正攻法でいったんですね。

島田 物書きになる方法がわからなくて。

—ですよね……。

島田 会社に通いながら、夜間のライターズスクールに通ったの。そこはシナリオライターの学校だったんだけど、ライターコースもあって。

—私、大卒でいきなりライター業界に飛び込んだ無法者なので、いわゆるライターの学校って何を教えているのか知らないのですが、授業内容はどんな感じなんですか?

島田 講師は現役の作家、漫画の原作者、編集者など。授業は週に1回で、半年間のコース。でもね、「文章の書き方」なんて最初の1回目の授業のみで、あとはだいたい「物書きとしてどう生きていくか」という、講師の体験談(笑)。でも当時教わった「ライターの現実」は、実際にライターになってからすごく役立ってる。

—えーっ! でもわかるなぁ。「文章の書き方」をカリキュラムやテキストにするといっても……小学校の授業みたいに作文を添削したり!? それって難しいですよ。

島田 習ったのは、「ライターには徒弟制度がないから、まずは業界に知り合いをつくれ」とか「名刺を作ったときからライターだ」とか。

—出た(笑)。おなじみのフレーズ。

島田 そんな授業の中で「ギャラは安くてもいいからまずは1本、メディアで書け」と教わったの。たった1回でも媒体での執筆実績があれば、一応は“プロのライター”だから、と。

—なるほどなぁ。あ、ランチ(*2)がきましたよ。食べながら話しましょう。

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*2:佳奈さんに連れて行ってもらった中目黒のカフェ。ランチのタコライスが美味だった。なぜだろう、ライターさんは素敵なお店をよく知っている。

メルマガをきっかけに本の執筆依頼が!

—その“最初の1本”はどこの記事だったんですか?

島田 ライターズスクールを卒業する頃、たまたま知り合いに「ちょっとバイトしてみないか」と声をかけられたの。それがライターとしての初仕事で、内容は、アダルト雑誌の体験談(笑)。架空の“A子さん”になりきってエロい体験談を書く、という。ギャラは1記事5000円だったよ。

—ちょっ……(笑)。それをまた、ためらわずに引き受けるのが佳奈さんらしいなぁ。

島田 さらにそこから別の編プロを紹介されて。ちょうどOLをしていた会社を辞めたばかりだったので、編プロにバイトとして通うようになったの。お客様へのお茶出しとか、アルバイトの仕事もこなしつつも、テレビ番組の紹介記事や結婚式場の取材記事なんかも執筆して、時給800円。

—執筆しても時給のバイト代で済まされる、ってことですね。駆け出しのライターなら「書ける」というだけで勉強にはなるけれど、生計を立てるにはちょっと厳しいかな。

島田 うん、だから結局すぐに辞めて、広告代理店の契約社員になったの。再び夢は保留に(笑)。

—やはり、いきなり「筆一本で食べていく」って難しい……。

島田 書きたい思いはあるんだけど、まずは生活できないとね。ずっと「性別や年齢に関係なく働くために“手に職”をつけたいな」と思ってて、同じ頃、SEになるために情報処理のスクールにも半年間通ってたの。ちょうど夫と離婚したり年齢的にも30代手前だったから、もう必死。せっかく独りになったんだから好きなことをしたいし、だけど食べていかなきゃならないし。野心全開(笑)。 

—佳奈さんの、「まずは学ぼう」という姿勢って、本当にすごいと思う。フリーランスで生きていくためのヒントがそこにありあそう。

島田 広告代理店の仕事が契約満了になったとき、まずはIT企業に転職。4年後にフリーのSEとして独立し、ようやく生活もうるおい気持ちに余裕ができた頃に、ちょうどメルマガブームがきたのよ。

—ありましたねぇ、メルマガブーム。

島田 SEの仕事をしながら週末にメルマガを書いて配信、という生活をしばらく続けていて、途中からフリーライターとして2足のわらじ生活になったのね。最初はケータイの占いサイトのゴーストライティング。なんと1文字1円(笑)。その後ケータイ小説の連載をしたり有料メルマガを配信していたら、同じメルマガライターから先に作家デビューした友人が書籍の編集者を紹介してくれたの。彼女もいまは作家として活躍しているよ。

—コツコツ続ける。これも大事! そして人脈ですねぇ。その人脈も、継続させることで信頼を勝ち得て、形成されていくのかもしれません。

島田 そこからは、もう驚くほどトントン拍子。引き合わせていただいた編集さんに「有料メルマガを本にしませんか?」と言われて、それが初の単行本に。

—私が発売日に書店で手に取った『人のオトコを奪る方法』。大和書房さんですよね。裏にはそんなストーリーがあったのかぁ。

島田 これまでに単行本を7冊、電子書籍を33冊出してきたけど、一番売れたのは最初に出した『人のオトコを奪る方法』だよ。

—満を持しての作家デビューですね。 

島田 その1冊が売れたおかげでようやく「この仕事で食べていける」と確信した。「作家になりたい」と思ってから本業になるまで約17年。長い(笑)。

—“名刺代わりの一冊”とはよく言われますけど、書籍を出すと、一気にランクが上がりますよね。ライターというよりは「作家の先生」に。

島田 私は「女豹ライター」も肩書きにしているけどね(笑)。確かに、1冊出してからは「ケータイ小説を連載しませんか?」「電子書籍を書きませんか?」と、執筆依頼はどんどん増えていった。

—佳奈さんは、自分のお名前を出して執筆されているからライターとは一線を画するというか、ライターにとっては憧れの立ち位置ですよね。“自分の名前で書く”って。それが「できる/できない」の違いって何だと思います?

島田 幅広く書けるか、専門性を突き詰めていくか……の違いかな。幅広く書けるって悪いことじゃないし、私はそっちのほうが苦手。

—私はむしろ商業ライターとして“幅広く”系でしたね。だいたい、何でも取材すれば書けてしまうタイプ。だから、仕事のフィールドが主に週刊の女性誌でした。

島田 安定収入になるから、それはそれでうらやましいよ(笑)。これからプロとしてやっていこうと考えている人は、自分がどっちのタイプかを見極める必要があるかもしれないね。「私の専門」と言えるものを見つけて掘り下げ、自分の名前で記事を発表する“作家”タイプ。あるいは、幅広いジャンルからネタを収集できて、取材して、媒体の名のもとで書く“ライター”タイプ。 

—佳奈さんは、どうやって見極めたんですか?

島田 私は恋愛について書きたかった……というか興味がないことは書けないタイプだから(笑)、自然と今の状態にたどり着いたのかも。すでに自分の中で書きたいテーマが決まっているなら、生活のためにやみくもに執筆仕事を引き受けるのではなく、自分のテーマを書き続けることじゃないかなぁ。ブログでもいいしメルマガでもいいし。

—いまはnoteとか、便利なプラットフォームがたくさんありますし。それに、好きなことなら書き続けることも苦にはならないはず。「恋愛」とか「美容」とか「エンタメ」とか、ジャンルを絞って知識を培っていく。物書きとして生き残るには避けるべきではないステップかも。

島田 そうやって日頃から準備をしておけば、いざ波がきたときに乗れるんだと思う。常に刃を研いでおいて、いつでも使えるようにしておくこと。

—佳奈さんが、メルマガブームの波に乗ったように。

島田 あと、先々の自分は物書きとしてどうありたいかを真剣に考えて、早めに準備していくことも大切。私の場合、40代になったら「女性の生き方」についての本を出版したいという思いがあったの。大人の女性向けの本って、悩みや躓きを解消する系ものが多いけど、そうじゃなくてもっとポジティブに「どう生きるか?」を考える本。

—最新刊の『腐らず、枯れず、咲き誇れ! アラフォー独女の生きる道』(*3)ですね。

腐らず、枯れず、咲き誇れ! アラフォー独女の生きる道

*3:「腐らず、枯れず、咲き誇れ!」のサブタイトルを冠した、島田さんの最新刊。「このままでいいの?」と迷う大人の女性の心がすっと軽くなる本。

島田 『アラフォー独女の生きる道』を出せたことで、“恋愛の島田佳奈”という枠から少し幅が広がったかな、と。

ステージを上げるなら「趣味」ではなく真剣勝負で

—そういえば佳奈さん、また何かのスクールに通ってません……?

島田 ああ、ラジオ局で習っているトークのレッスンね。

—なぜラジオ!(笑)

島田 ある日、テレビを見ていたら明石家さんまさんが「文字媒体の取材は(いつまでも残るから)受けない。テレビは消えるからええんや!」というニュアンスのことを言っていて、「消えるからいい、という発想もありなんだ!」と自分の中で何かが開眼したんだよね(笑)。

—今後は「書く」ではなく「喋る」ほうへ?

島田 書くことはもちろん続けるんだけど。私って、言葉にこだわりがある分、自分の言いたいことを原稿では自制させてしまうところがあって。

—確かに。ハジけたテーマを書いているようで、よく読むと冷静かつ理性的。それが佳奈さんの原稿の特徴です。

島田 でもほら、実際に喋ると調子に乗っていくタイプじゃない?(笑)

—過激なトークが炸裂、ですね(笑)。

島田 で、書くことと平行してラジオのパーソナリティができたらいいな、と思ったの。でもPodcastで趣味的にやるのは嫌。どうせならプロになりたい。 

—そこでレッスンに通ったんですか。自分をランクアップさせるときに、正面から、真剣に向き合うのが佳奈さんのやり方。

島田 強みを自分で見つけて、自分で磨いていかないと、プロとして生き残り続けることはできないから。

—自分でステージを上げていかないと、収入も据え置き、ですもんね……。

島田 ラジオに関しては、純粋に楽しいから勉強しているところもあるんだけど。その「楽しい」を感じられるかどうかも、継続の鍵じゃない?

—だと思います。

島田 「ちょっと文章を書いてみたらライターになれた。ラッキー!」でもいいんだけど、仕事としてずっと続けていくなら、「好き」「楽しい」というエネルギーを持てるかどうかも結構重要。

—会社に属しているわけではないから誰も助けてくれないし、下から若手は増える一方だし。それでも自分を支えるのは「好き」「楽しい」という情熱ですね。カジュアルなランチインタビューのはずが、熱い話になりましたね。ありがとうございました!

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島田佳奈さんのインタビューを通じて、プロの物書きに必要なことが、さっそくいろいろと見えた気がします。

「そもそも文字に触れるのが好きだった」という“才能”の部分は、プロになるには必須の要素かもしれません。プロスポーツ選手、プロのシンガーなどに置き換えてみれば腑に落ちますよね。

その生まれ持った才能を、仕事の武器として使えるように磨きあげるには、自分自身で努力すること。島田さんのように一から勉強をして下地を築き、波がきたら迷いなく飛び乗る。日々の締切りに追われながらも、次のステージへの準備も怠らない……。シリーズ第1回目にして、「プロライターの成功道」の答えが出揃ってしまったかもしれない!(笑)

とはいえ、メディア業界にはまだまだユニークな逸材がわんさかといます。私が行脚して、みなさんに彼らの魅力や成功の秘訣をお届けしていきますね。次回もどうぞお楽しみに!

今回訪ねた人:島田佳奈さん

作家/女豹ライター。AllAbout恋愛ガイド。2005年よりライター活動を始める。これまでの著作は『人のオトコを奪る方法』(大和書房)、『アラフォー独女の生きる道』(双葉社)など多数。豊富な体験と取材による“血肉データ”をベースとした、ポジティブで甘辛な恋愛論に定評あり。

公式サイト:http://kana-shimada.net/

 

著者プロフィール

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藤島由希
早稲田大学を卒業と同時にライターに。以後、フリーエディター、インタビュアーとして女性誌を中心に活動。これまでの執筆媒体は『anan』『Hanako』『GINZA』『BRUTUS』など。現在はWEBディレクターとして活動中。趣味、街歩き。好きな食べ物、おにぎり。

 

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