文章の書き方を習いたい?だったら達人の仕事を「写経」せよ!

「上手な文章」って何なんでしょうか。

「文章の書き方」ってどこで誰に習えばいいのでしょうか。

小学校のころに作文は書きますよね。読書感想文や夏休みの絵日記も。大学に進学した人は、論文を書いたかな? 最近は、文学部なのに卒論を書かなくても卒業できたりするから、微妙ですね。

いわゆる“現国”の授業で習うのは、「作者の気持ちを要約せよ」の手法。文章の書き方……とは言いがたいですね。ちなみに、私に文章の書き方を教えてくれたのは、新聞記者の祖父でした。そのおかげか、小学校に入学したてのころから「作文の上手い子」でした。環境的要因、遺伝、とも言えるかもしれません。

幼少期から本を読むのが好きだったので、インプット量も関係しているかも。

次に論理的な文章の書き方を習ったのは、浪人中に通っていた予備校でした。私が志望していた大学の文学部は小論文入試だったので、その対策の授業です。とてもテクニカルな内容で、ためになりました。

つまり、私に「文章の書き方」をまともに教えてくれたのは、祖父と予備校……。

私は、このようにお粗末な日本の国語教育の実態を非常に危惧しているのですが、そんな大きな話は置いておきまして。今回は、実践的な文章力のスキルアップについて考えてみましょう。

基礎がなければ個性は輝かない

プロのライターになれば、誰だって「上手いこと書いて認められたい」と野心を抱くものでしょう。個を殺して“全体の一部”としてシステマチックに執筆する類いの仕事もありますが、それでも「他のライターさんとは何か違うよね」と発注者に言わしめたい。美しく、簡潔で、澱みのない文章で……。

あるいは、個を(つまり名前を)出していい仕事のほうが上手く書くって難しいかもしれません。個性というのは、揺るぎのない基礎があって初めて許される装飾ですから。余裕から生まれる美しい飾り。基礎がなくてガタガタの文章は、どんなにデザインがかっこよくても建築不可能な例の物件と同じくらい無価値です。

では、大切な基礎を築くには? 写経ですよ。写経!

名文を何度も何度もなぞらえる

剣道であれ茶道であれ、その道を学ぶには、まず型から入りますよね。師の型を真似て、何度も何度も繰り返す。

野球やゴルフも似ているかも。素振りをして、体に型を覚えさせる。本番、ましてやプロのステージに挑むだなんて、もっともっと後のこと。

文章も、己の体を使って書くのだから同じです。ということで、まずは型を身につけましょう!

文章の上手い人を師と仮に決めて、その人の作品で気に入ったものを「写経」します。何も本気で筆と墨で書かなくても! そこまで言ってない! PCでWordに書き写せば十分です。

「私はいまだに原稿は手書きです」という方でしたら、原稿用紙にペンで書き写せばよろしかろうと思いますが、いまどきはみなさんPCですよね? 手書きと、PCでキーボードを打つのとでは筋肉の使い方が違うので、PC派は、どうぞそのままで。1つの文章を、10回くらい書き写してみましょう。

さて、日本語における文章の上手い人って誰でしょうね。芥川龍之介? 三島由紀夫? いまどきなら『火花』を書いた又吉直樹さんかしら。姑息にトレンドキーワードを盛り込んでみましたが、ようは誰でも良いということです。

新聞の記者さんでもいいでしょうし、人気メディアのライターさんでも、秒速でバズる企業ブログを書くあの人でもいいですね。それらの達人たちの文章をなぞって書き起こしてみると、彼らがどういった思考でその記事を組み立てたかがわかるはずです。問題提起をし、結論までどうスムーズに導いていくか。

あるいはリズム。多くの人に読まれる文章は、必ず“心地よいリズム”を持っています。上手いこと書かれているとさらっと読めてしまうため、なかなか気づきにくいですが、なぞってみることでリズム感も体得できるでしょう。

効果的な句読点の使い方や、体言止めでキリッとしてみたりする、抑揚のつけ方。比喩や形容詞の織り交ぜ方。さまざまな技巧が生かされていることにも気づくでしょう。

型を習得したら同じように書いてみる

写経を繰り返してだいたい型がわかってきたら、それを傍らに置き、今度は自分なりのテーマを真似ながら書いてみます。内容そのものをパクるのはダメですよ。それは盗用。泥棒。ダメ、絶対。

文章構成、見出しのつけ方、語尾の抑揚などを似せて書いてみます。するとほら! ちょっとかっこいい文章になったのでは? ね!

真似っこしたその原稿は、もちろん世に出してはダメです。まだまだ“素振り”の域ですから、いきなり巨人軍のナインになれるだなんて思わないでください。

真似っこなりに書き慣れてくると、やがて自分なりの工夫を施してみたくなってくるはずです。脳と指先の神経に型が刻まれた証拠ですね。そのステージまで行き着いたら、あとはもう思う存分に羽を伸ばし、自由に書きまくりましょう! あなたにしか書けない文章を。

ただし、ここに辿り着くまでは、最低でも3年はかかるかな〜と思います。みなさんの嫌いなあの言葉、そう、「石の上にも三年」ですね。変化の激しいこの現代で石の上に三年も座ってられるかよ! 人工知能に追い抜かされちゃうよ!

その憤りもよくわかりますが、プロになるって、簡単なことではありません。高校球児がすべての青春を費やしながら真っ黒に日焼けして猛練習をしてもプロ野球選手になれないのに、なぜあなたがたった3年の修業もせずにプロのライターになれるというのか! 練習帰りの高校球児にアイスでもおごってあげなさい!

でも、練習って必ずものになる

今回も「プロのライターになるってなんだか面倒臭いなぁ」と思わせんばかりの内容になってしまいましたが、逆です、逆。地道な鍛錬を積み重ねれば、プロになれる可能性があるのです。もう、東京で消耗しなくてもいいくらいの売れっ子ライターになれるかもしれない!

他人の文章を書き写すなんて、地味でつまらない練習でうんざり……かもしれませんが、ぜひ試してみてください。大きな気づきを得られるはずです。

「嫌だ嫌だ、修業なんかしないでさっさと稼げるプロライターになりたい!」とまだ駄々をこねるような人は、お盆休みを利用して、お寺で本物の写経でもして頭を冷やしましょう。

 

著者プロフィール

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藤島由希
早稲田大学を卒業と同時にライターに。以後、フリーエディター、インタビュアーとして女性誌を中心に活動。これまでの執筆媒体は『anan』『Hanako』『GINZA』『BRUTUS』など。現在はWEBディレクターとして活動中。趣味、街歩き。好きな食べ物、おにぎり。

 

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