ライターに向いてる、向いていない人の問題についてそろそろ考えよう

ライターに向いてる、向いていない人の問題についてそろそろ考えよう

メディアでデビューを果たしたものの俺はライターに向いているのだろうか……。

漠とした不安から思わず「ライター」「向いている」と検索してGoogle先生に尋ねてしまったみなさん、こんにちは! それって確かに深刻な問題です。一生の職業にするかどうかの決め手となりますからね。

そこで今回は「ライターに向いてる/向いていない問題」について考えてみましょう。これからライターを目指そうとしている人もぜひ参考にしてみてください。

「会社キライ→ライターになる」は間違い

俺ってなーんか会社組織になじめないんだよね。まずね、朝起きられない。ダルいし、眠い。毎朝9時までに出社とかありえない。時間を守るのキライ。俺は俺らしく、俺流で生きてゆく。だから会社を辞める!

こんな感じでライターになったのだとしたら危険です。フリーランサーは何でも自分でやらねばなりません。営業、マーケティング、製造、経理、総務、経営戦略を練る……。つまり“会社”そのもの。自分が社長であり従業員なのです。あれ、おかしいですね。会社という組織になじめなくて飛び出したら、自分が“会社”になっちゃった! 非常にもやっとするオチです。

しかし、これ、本当に深刻な“ライターあるある”なんです。

時間を守らないライターは切られる

ライターは時間管理に厳密であらねばならないという話は過去にお届けしました。(ライターになるには時間を厳守せよ!「30分」「1時間」「12時間」「24時間」ルール

納期を守る。打ち合わせや取材に遅刻しない。プロのライターであれば絶対に心得ておくべきことです。

たとえば、あなたがピザのデリバリーをオーダーしたとします。「30分以内にお届けします」と確約されました。よし、テレビでサッカー中継を見ながらピザを食べられるぞ! ビールもキンキンに冷やしてある。万全の態勢です。

ところが、30分が経過してもピザ屋は来ない。しびれを切らして電話をしてみる。「申し訳ござません。あとちょっと時間がかかりそうです」とピザ屋は平謝り。仕方ない、サッカーの後半戦にあわせて食べるとするか……。

ところが、1時間経っても2時間経ってもピザは来ない。サッカー中継はとっくに終わってしまった! 当然、怒りの電話をしますよね。するとピザ屋は「申し訳ございません。お届けは深夜になるかも……」などとしれっと言うではないか! その瞬間、あなたはそのピザ屋のメニュー表をゴミ箱に放り込むことでしょう。なぜなら、代わりのピザ屋なんて世の中にはたくさんあるのだから。

ライターも同じ。「30分以内にピザを作れると思ったんだけど、できなかったなぁ〜」という適当さではダメ。プロを自称しながら納期を守らないようでは、信用を失い、やがてお呼びがかからなくなるものと思ってください。

コミュニケーションが苦手なやつはいらない

クリエイティブの仕事は、事前の準備が勝負。作業の8割は“仕込み”と考えてください。8割がた仕込んで、形が見えてきたら、執筆は残り2割程度の労力で納まるはずです。

その準備過程では、プロジェクトに関わるスタッフとの高度なコミュニケーションが求められます。膝を突き合わせて打ち合わせをし、電話やメールで活発に意見交換を行い、お互いの知恵と情報を出し切る。そして取材や撮影現場では、スムーズに進行させるためにスタッフ達にこまめに声を掛け、盛り上げて、フルコミットする。

それなのに。「俺、人と絡むの苦手だから、家にこもって原稿を書けるライター業が向いているわ」とか!

独立してフリーランス(個人事業主)になったのなら、営業をするのは自分。納期や報酬について交渉するも自分。ぜーんぶ自分の仕事! 2割の執筆時間を除けばほとんど“人と密に関わる”のがライターの仕事だと思ってください。

実際、売れているライターさんには“いい人”が多いです。笑顔が爽やかで、挨拶が朗らかで、いつ電話しても気のいい返事をくれてトークが弾みます。メールにも「暑くなってまいりましたね。いかがお過ごしですか?」といった気遣いの言葉が溢れています。そんなライターさんは、人が好きで、人と関わることに喜びを感じられるタイプなのでしょうね。

ライターに限らず、フォトグラファー、スタイリスト、メイクアップアーティストなど、大物のクリエイターほど“いい人”です。一緒に現場で仕事をしていると「なんて楽しんだろう。この時間がずっと続けばいいのに!」と熱くなるぐらいワクワクします。「嫌なヤツだなぁ。二度と会いたくない」と思う人ってほとんどいません。いたとしても、いつの間にか業界から姿を消しています。そういうものです。

体力がないとライター業はちょっと厳しいかも

独り立ちしたのなら、「風邪を引いたので休みます。代わりにこの仕事、お願いね」と同僚に頼めない……ということぐらいはお分かりですよね。

でも、原稿の締切りは待ってくれない。

私が週刊誌のライターをやっていたときのこと。ウイルス性胃腸炎を患い39度の高熱を出して寝込んでしまったところ、担当編集さんから電話がかかってきました。「具合はどうですか? 大丈夫ですか!? 心配してますよぉ〜。ところで原稿は?」……はい。ありがたくも温かいお見舞いの言葉を頂戴しましたが、締切りが延びることはありませんでした。

当たり前です。週刊誌です。締切りを守るのは鉄の掟です。何より、取材内容を把握しているのはライター自身だから、このタイミングで替えはきかない。最後までやり切るしかないのです。

わたしは、もちろん書きました。熱で脳の回路はこんがらがり、視界不良でPC画面がグラグラとして、キーもろくに打てません。それでも一文字一文字、どうにか刻んで入稿しました。ところが校了後に読んでみると、意外にちゃんと書けていることに自分自身で驚きました。また一つ、壁を越えた瞬間でした。

一方で反省もしました。それは、自分自身の命のために。あんな熱と胃痛と嘔吐に苦しみながら原稿を書くなんて二度とごめんだ! 健康、だいじ! 体力、だいじ!

ライターさんには健康オタクが多いような気がします(わたし調べ)。たった一人で奮闘し、生計を立てているのだから、頼れるのは己の体のみ。必然的に健康オタクになっていくのでしょう。

そもそも体力があると理想的です。さらに日々の体調管理を心がけ、常に最高のパフォーマンスを出すために、ベストコンディションをキープしたいですね。

実は“デキるビジネスマン”がライターに向いている!?

ここらでそろそろまとめてみましょう。ライターに向いている人間とは?

自分を売り込む営業力や交渉力があり、お金と時間の管理がきちっとできて、マメで明るく社交的。毎日ジョギングやジムで体を鍛え、ヘルシーな食生活を心がけている。なんだか、世に言う“デキるビジネスマン”みたいですね。

だからPENYAでは、副業ライターさんも歓迎しています。実は、ライターの適正を持っている人は、企業にお勤めして活躍している……という例が少なくないのです。その逆で、業界歴のわりと長い私から見ても「向いていないなぁ」と思うライターさんが非常に多いというメディアの実態……。本当に、嘆かわしくも根の深い問題です。


フリーライターは、場所にも時間にも捕われず、自分の好きなスタイルで仕事ができます。しかしそのメリットを享受できるのは、己を律し、「自由」をコントロールできる者のみ。

「デカい会社に勤めてルールに縛られながら働くなんて俺にはマジ無理だ。そうだ、自由なフリーライターになろう!」などと思っているとしたら、本当に止めておきましょう。マジで痛い目に遭うから。

 

著者プロフィール

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藤島由希
早稲田大学を卒業と同時にライターに。以後、フリーエディター、インタビュアーとして女性誌を中心に活動。これまでの執筆媒体は『anan』『Hanako』『GINZA』『BRUTUS』など。現在はWEBディレクターとして活動中。趣味、街歩き。好きな食べ物、おにぎり。

 

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