プロのライターになるにはまず「嘘つき」を辞めること!メディア人の心得

どうも。すぐに昔話を持ち出す大人が嫌いだったのに、近ごろ昔語りばかりする自分がいることに気づき、うんざりしているPENYA編集長の藤島です。

それはおもしろがって聞きたがる若者がいるからさ!」と部下のせいにして今週も語るとしましょう。プロのライターになりたいのなら、まずは嘘つきを辞めることだよね、というお話です。


しょーもない嘘は秒速でバレる

その昔、私が新米ライターとして走りだしたばかりのときにまず教わったのが「嘘を書くな」ということでした。

新人です。ベテランの編集者さんに「よく書けてるじゃん」と褒められたいというささやかな野心があるものです。ちょこっと文章を盛って、カッコよく仕立てた原稿を提出しました。すると受け取った編集さんが、ズバリ。

「これ、本当のこと?」

「嘘じゃないよね?」

赤ペンで、私がちょこっと盛った部分をコンコンコンと指しながら。何と恐ろしや……! と、未熟な私は震えあがりました。一瞬でちっぽけな野心を見破られたことと、その嗅覚に。そして己の罪深さに深く恥じ入りました。

言葉の嘘ほど罪深いものはない

「ペンは剣より強し」の格言をまさか知らないライターさんはいらっしゃらないと思いますが、言葉というものは想像を絶するほど重く、それでいて光の如き速さで、人間の脳に奥深く突き刺さります。一生刻まれ、消えることのない傷。だから剣より強いのです。

それほどの威力を持った言葉に、軽率にも嘘の飾りを施し、世に伝搬させることの罪深さたるや? ベテラン編集者のように嘘を嗅ぎつける能力を持たない人々が「真実である」と信じたとしたら? たとえば歴史がねじ曲げられてしまったり、恐ろしい結果につながります。

メディアに携わる人間がまず先輩から教わるのは、嘘を伝搬させることの恐ろしさと罪深さ。メディア人としての倫理観。それを心得て初めてペンを持つことを許されるのです。

なぜ嘘をつくのか、つけるのか

嘘をつく。日常生活やビジネスにおいても、あまりよろしくない行為ですよね。その幾倍も、記事に嘘を忍ばせることは非常に罪深い行為。それなのになぜか平気で実行する人がいます。なぜなのか? 理由を考えてみましょう。

1.倫理観の欠如

メディア人としての倫理観を持っていないため。それが培われる土壌にいなかった、つまりプロ未満であるため。これまで場に恵まれなかったことはとても残念ではありますが、悔やむのは止めましょう。今日、この場所から、己を厳しく戒めることを始めればいいのですから。

2.読者の存在を意識していない

ライター(物書き)を自称し、文字を発信しながら、なぜか「読まれている」という自覚がないため。目の前に受け手がいれば、嘘をつく際にためらいが生じるというものです。しかし、無人の宙に向かってただ通信しているような感覚で書いているから、嘘で原稿を埋め尽くすことができるのです。覚えておいてください。必ず誰かが見ている(読んでいる)、つまりバレるということを。

3.手抜きしている

不勉強、手抜きから生じる誤りも、結果的に「嘘」の部類に含まれます。リサーチ不足、取材不足。そして、ソースの確認を怠る……。労を惜しんだことで記事に誤りが紛れ込み、嘘を発信することになるのです。無自覚の嘘。

これ、ちょっと恥ずかしいパターンです。だって手を尽くせば防げたわけですから。発注主の立場になって考えてみてください。手抜きをするライターに好んで執筆を依頼するでしょうか? 自分の原稿には、労を惜しまず手をかけましょう。


嘘を掴まされる事態を防ぐには?

リサーチや取材を行っても、「嘘を掴まされる」というケースもあります。そもそもの嘘つきが過去に発した情報が残っていた、取材対象(情報ソース)そのものが嘘をついた……。起こりうる事態です。

偽りの情報を世に送り出してしまわないように、メディアに携わる人間が行うのは、ソースの徹底確認です。「その情報は確かなのか?」と裏を取るための確認作業を、これでもかこれでもかこれでもか……と行います。あの手この手で、さまざまな角度から情報源を検証します。

だいたい裏は取れて、いったん原稿を書き終えても、なんだか妙に気になって、夜中に飛び起きてもう1回読み直して「大丈夫かなぁ?」と逡巡したりもします。その際に少しでも迷いやグレーの部分が残っているうちは、その原稿は世に出してはいけません。抜かりなく裏が取れるまで粘りましょう。

嘘はあなたの尊厳をも傷つける

調べる時間がなかったり、執筆期間が短くて文字で埋めるので精一杯だったり。あまりにも苦しい状況で「バレないだろう」と、原稿を嘘で塗り固める。

その記事が世の中に配信されたら、まぁすぐバレると思っていてください。秒速です。

そしてその嘘により、誰かの尊厳が、いわれのない理由で損なわれたとしたら、どんな言い逃れも通用しません。あなたはその罪を背負い、一生をかけてつぐなわねばなりません。

さらには「嘘つき」呼ばわりされて、あなたの尊厳も損なわれることになります。プロのライターを目指す上で「嘘つき」を辞めるべき一番の理由は、実はここにあるかもしれません。

あなたが、あなた自身を傷つけないために。情報の入手と取り扱い、そしてアウトプットを、あなたの全プライドをかけて行いましょう。


言葉の力をポジティブに活用しよう

言葉には力があります。ということは、誰かを楽しませたり喜ばせたり、絶望や悲しみから救って勇気づけることも可能です。安易な嘘で、世界の誰かや自分自身を傷つけるよりは、ポジティブな方向に生かしてみませんか? ライターの仕事の醍醐味は、まさにそこにあります。

手間を惜しまず丁寧に調べ、取材をし、慎重に言葉をつむぎ、あなたの魂とプライドをこめた原稿を世界に発信しましょう!


この記事を読んで、「あー、面倒臭い。なんだか大変そうだし重いわ」と感じた人は、ライターという職業には向いていません。別の道をおすすめします。


 

著者プロフィール

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藤島由希
早稲田大学を卒業と同時にライターに。以後、フリーエディター、インタビュアーとして女性誌を中心に活動。これまでの執筆媒体は『anan』『Hanako』『GINZA』『BRUTUS』など。現在はWEBディレクターとして活動中。趣味、街歩き。好きな食べ物、おにぎり。

 

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