その原稿ちょっと待った。納品前に校正、校閲、推敲してる?

その原稿ちょっと待った。納品前に校正、校閲、推敲してる?

原稿を書き上げて、「終わったー!」とすぐに納品していませんか?

納期には間に合わせなければならないし、さっさと次の原稿に取りかかりたい。あるいは書き上げた達成感が脱力感に変わり、もう読み返したくない、などと思っているとしたら、気をつけないといけません。

ノリの良い勢いがあった時に書いた文章こそ、冷静になって見直すべきです。

結構、恥ずかしい言い回しや変換ミスなどをしているかもしれませんからね。

──と、これは自戒を込めて書いていますが……。

自分の原稿、何回読み直していますか?

記事を書き終えた時は達成感が得られますので、一仕事終えたという感覚に陥ってしまうことがあります。

しかし、仕事はまだ終わっていません。書き上げた原稿は、どんなに簡単な内容の記事や短い記事だったとしても、そのまま納品せずに必ず見直しましょう

私は、記事を書いた後は、できるだけ3回以上は見直すようにしています。ニュース記事のように、書き上げたらすぐに納品しなければならないような仕事でも、最低2回は読み直しています。

それは、書き上げたばかりの記事には、妙な言い回しや文法上のミス、同じ接続詞の連続や漢字変換ミス、そして単純な入力ミスなど、さまざまなミスが発生しているに違いないからです。

そのようなミスが多い原稿をそのまま納品してしまうと、単に恥ずかしい思いをするだけではありません。クライアントからはライターとしての仕事への姿勢に対する疑問まで抱かれてしまうかもしれません。その結果、信頼を無くしかねないのです

そこで、自分の書いた原稿を読み直すことを習慣づけ、こういう事態を防ぎましょう。原稿の見直し方には、「校正」「校閲」「推敲」があり、それぞれ別の担当者が分担することもあります。ただし、ライターはこれらを別々に行う必要はありません。とにかく読み直せば読み直すほど、原稿の質は向上すると考えましょう

「校正」「校閲」「推敲」とは

それでも読み直す際の勘所として、「校正」「校閲」「推敲」について念のため復習しておきましょう。

「校正」は自分が意図したとおりの意味が通る文章が書けているか、誤字脱字はないかなどの基本的なチェックを行うことです。

「校閲」では、書かれている内容に事実誤認はないか、主語や述語が間違っていないか、形容詞や副詞は適切な位置に置かれているか、正しい用語が使われているか、慣用句や熟語を間違って使っていないかなどをチェックします。

そして「推敲」では、もっと分かりやすい言い回しができないか、一文が長すぎて分けるべきではないか、同じ接続詞が連続していないかなど、読者目線に立って文章の練り直しを行います。

いったん時間をおいてからチェックする

ノっている時に書いた文章ほど、できあがった原稿を冷静にチェックしましょう。理想的には、いったんほかの仕事をするなどして、その原稿を記憶から消してしまうくらいの距離感を持ちたいところです。「あれ? 自分はこんな文章を書いていたんだ」と思えるくらい忘れることができれば、新鮮な気持ちで客観的にチェックできます。

書き上げた直後に読み直してしまうと、たとえば主語が頭の中のワーキングメモリ(作業記憶)に常駐したままの可能性があります。そのため、主語が原稿中で省かれていたとしても、無意識に自分の頭の中で補って読み流してしまうため、分かりにくさに気付かない可能性があるのです。

また、形容詞や副詞は修飾される名詞や動詞の直前に置くのが基本ですが、離れた所に置かれていても、やはりワーキングメモリに描かれた映像なりストーリーなりで補って原稿を読み流してしまいます。その結果、形容詞や副詞が分かり難い位置に置かれていても、自分では不自然さに気付けないことがあります。

原稿を寝かせて、時間をおいてから確認する重要性をご理解いただけたでしょうか。

未だに悩む読点の位置

ところで、読点をどこに入れるかは未だに悩ましい問題です。読点の位置を判断する明確なルールがないからですね。もちろん、読点の位置によって意味が変わったり、読みにくくなったりする場合は必然的に位置が決まりますが、文章のリズムを整えるための読点は、はっきり言ってその人のセンス次第なのです

たとえば次の文章。

"彼は叫びながらボールを蹴っている少年に近付いた。

さて、叫んでいるのは「彼」なのか「少年」なのか。この場合は読点で意味が変わってしまいますので、位置が明確に決まります。

叫んでいるのが「彼」であれば、

彼は叫びながら、ボールを蹴っている少年に近付いた。

ですね。

叫んでいるのが「少年」であれば、

彼は、叫びながらボールを蹴っている少年に近付いた。

となります。

しかし、

その少女は小鳥の踊るような仕草を見て笑った。

といった文章の場合は、読点を入れなくても意味は正確に伝わります。あとは書き手がどこに力を入れているのか、あるいはどのようなリズムで読ませたいのか、ということにかかってきますね。

「少女」を中心にした情景を伝えたければ、

その少女は、小鳥の踊るような仕草を見て笑った。

一方、「笑った」ことを強調したければ、

その少女は小鳥の踊るような仕草を見て、笑った。

となるでしょうか。

この辺りは、やはりセンスや好みによって左右されるかも知れません。

ケアレスミスはワープロソフトの校正機能で防ぐ

人間には、何度読み直しても見落としてしまうケアレスミスというものがあります。助詞がダブっていたり、重ね言葉を使ってしまっていたり、あるいは揺らぎ(オペレータとオペレーターの混在など)が生じていたり、慣用句を間違っていたり。

そんな時に心強いのが、ワープロの校正機能ですね。「Just Right!」のような校正に特化された専用ソフトもありますが、なかなかに高額なので手を出しにくいものです。

既に持っているワープロソフトに校正機能が搭載されているのであれば、使わないのはもったいないですね。

私の場合はMicrosoft Wordを使っていますが、このソフトの校正機能は非常に優秀です。さまざまな設定ができますが、初期設定のまま利用しても十分役に立ちます。(Wordの校正機能の設定に関する記事はこちら

せっかく備わっている機能ですから、ありがたく使わせてもらいましょう。

まとめ

いかがでしょうか? せっかく書いた力作の原稿が、つまらないミスで評価を落とされてしまっては残念ですよね。1時間かけて書き上げた原稿が、あと数分の読み直しを惜しんだがために、ライターとしての評価を下げてしまうかもしれません。

今回のコラムは、自戒の意味を込めて書きました。やはり、原稿を書き上げると、どうしても達成感が脳を支配してしまい、客観的に原稿をチェックする意欲を萎えさせてしまうからです。

ですから、自分に対しても改めて忠告したいと思います。

その原稿ちょっと待った。納品前に校正、校閲、推敲してる?」と。

 

著者プロフィール

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地蔵重樹(ハンドルネーム:しげぞう)
ライター。ブックライティングを中心に、Webマガジンや企業のオウンドメディア、リードナーチャリング用のe-bookなどを執筆している。オカルトから経済・テクノロジーまで守備範囲が広いが、グルメとスポーツのお仕事はお断りしている。趣味は読書と、愛猫と一緒にソファーで昼寝すること。

 

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