「棚卸し」と「チューニング」で、自分に合ったライティング仕事を獲得する

「棚卸し」と「チューニング」で、自分に合ったライティング仕事を獲得する

「コスメ系のキュレーション記事ってできます?」「情報誌に掲載する飲食店の取材を10件お願いしたいんですけど」「1記事1000円で、エンタメ系のニュース記事を書ける人探してます!」

……。

こんにちは。“企業広報支援ライター”の大島です。そう、この肩書きの通り、私の専門は主に中小企業の会社案内やコーポレートサイトの制作なんです。しかもBtoBで、ちょっと堅いイメージの業界が中心。しかし独立したばかりのころは、冒頭に挙げたように「まったくの筋違い」な問合せや依頼がけっこう多くありました。

「依頼がきた!」と瞬間的に大喜びしても、メールの内容を読んで意気消沈し、丁重にお断りを入れる……。どんな案件であっても「せっかくきた依頼を断る」という行為は、なかなかの徒労感を伴うものです。「このままではイカン!」と、あるとき私は一念発起しました。

自分が得意にしている分野の仕事依頼が、自然に集まってくること。そしてそのジャンル外の仕事がある程度フィルタリングされること。そんな理想的な状況を生み出すために必要なことは何だろうーー?

そこで私がはじめたのが、業務の「棚卸し」と「チューニング」でした。

ただ「ライターです」と名乗っても、仕事依頼は変化球だらけ

まず「棚卸し」について。ライターのみなさんはよくご存知だと思いますが、一口に「ライティングの仕事」といっても、その分野、ジャンル、仕事内容は驚くほど幅広いものです。ですから単に「ライターです」と名乗っても、あちこちから変化球(自分にとっての)が飛んできてしまうのはいたしかたないことなのです。

そうした状況をふまえたうえで、できる限りストライクゾーンにおさまる仕事を望むなら、どうすればいいのか。まずは「自分は一体何ができるライターなのか」「どんな得意分野を持っているのか」を明確にする必要があります。

「ITベンチャー、スタートアップ系のインタビューが得意」と明言している人に「ちょっとファッションのキュレーション記事書いてくれる?」と頼む人は、おそらくいません。「最新コスメ情報なら任せてください!」というライターに、「製造業の広報誌を作りたいんだけど」などという相談をする人もいないでしょう。

棚卸しした結果は、さまざまな方法で発信することが大切です。名刺、SNSのプロフィール、サイトやブログ、ポートフォリオに……。とにかく人目に触れるところには、しつこいくらい明記しておくこと。それを繰り返すことで、周囲から「この人は○○のライターだ」と認識されるようになるのです。

「自分はこういうライターだ」というイメージを周りから固めていく 

棚卸ししたことを発信するだけでも、ある程度の効果はあるはず。そこからさらに「自分がどんなライターか」というイメージを固めていくために欠かせないのが「チューニング」です。

「専門分野」「得意ジャンル」「自分には何ができるか」。これらはオーソドックスな発信内容ですが、あえて“それ以外”の切り口を考えてみてください。

1)「苦手な分野」も隠さないで発信する

前述の通り、ライティングの仕事はとてつもなく幅広いものです。なかには「よく問い合わせをもらうけれど、自分は絶対にやらない・受けられない(ニガテである)」というジャンルもあるでしょう。それならば、いっそそれもあわせて発信してしまってはいかがでしょうか。

「○○という問い合わせを多数受けますが、当方では対応しておりません」
「○○ジャンルのお仕事は基本的にお受けしていません」

周囲からそういった認識をしてもらえるようになれば、苦手分野の依頼が重なることもなくなるでしょう。

2)「料金表」を公開する

ライティングの仕事は、内容やレベルによって報酬の差が激しいですよね。得意分野の仕事依頼をもらって喜んでいたものの、いざ報酬額を聞いて、悪い意味で目が飛び出てしまった……などということも多いでしょう。残念ながら。

そうしたミスマッチを防ぐのに、効果を発揮するのが「料金の目安」の公開です。たとえば「ウェブマガジンの記事1本○円〜」とサイトなどに記載してあれば、そこからあまりにもかけ離れた報酬での仕事依頼を、多少なりともフィルタリングすることができるのです。

「苦手分野」「料金の目安」は、公開するのにかなり勇気がいる項目でもあります。「それによって依頼が減ってしまったらどうしよう」と、不安に思う人も多いでしょう。

しかしこうした「チューニング」をせずに何でもかんでも仕事を受けてしまうと、作業効率も落ちるでしょうし、何より「自分はどんなライターか」が自分にも、周りにも見えなくなり、そのうちその他大勢の中に埋もれていってしまう……。そうなりかねません。

それよりもしっかりと「棚卸し」「チューニング」をして、ライターとしての足場を固めていくことをオススメします。そしてそれは、「自分はこういうライターとして仕事をしていくんだ!」という自負や覚悟にもつながり、結果的に将来への道を切り開く起点になってくれるはずです。

Photo by Ryan McGuire

 

著者プロフィール

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大島悠
企業広報を専門にしているフリーランスのライター・編集ディレクター。BtoB専門のデザイン制作会社勤務を経て、2013年に独立。会社案内や採用案内、コーポレートサイト、広報誌、各種パンフレットなどを中心として、企画・編集から取材・ライティングまでを幅広く請け負っている。

 

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