【海外特派員レポート】街が華やぎ、気分もほっこり、ドイツのクリスマス

【海外特派員レポート】街が華やぎ、気分もほっこり、ドイツのクリスマス

毎年、11月末頃からドイツの街中は急にキラキラと暖かい光に包まれはじめます。市庁舎広場を中心にクリスマスマーケットが開かれ、街の目抜き通りやショッピングセンターだけでなく、住宅地でもクリスマスの飾りが窓を装飾し、歩いているだけでどこかほっこり幸せな気分に。
突如として息を吹き返す街を歩けば、それまでのグレーな空とどこか寂しげな景色はどこへやら。クリスマスまでの1カ月は、ドイツ人がこよなく愛するクリスマスの醍醐味が満載です。

クリスマスの準備期間「アドベント」

12月25日の4回前の日曜日から始まるのが、アドベント(Advent、待降節)で、クリスマスまでの準備期間ともいえる時期です。アドベントの開始と共に、街中がきらびやかに飾りつけされ、ドイツ人のテンションも次第に上がってくるのもこの頃。友だち同士や会社でも、忘年会ならぬクリスマスパーティも盛んに開かれます。

アドベントの開始を告げる「アドベントクランツ」

アドベントの開始を告げる象徴的なものが、各家庭で飾られる「アドベントクランツ」です。もみの木の枝などで作ったリースに4本のろうそくを立てた飾りで、クリスマスまで4回ある毎日曜日に1本ずつ火を灯していく伝統があります。アドベント前になると、さまざまな種類が売り出されますが、パーツだけ買って自分のクランツを作る家庭も多いです。

子どものテンションもMAX「アドベントカレンダー」

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そして、12月1日に始まるのが、「アドベントカレンダー」です。これは、1日から24日を指す24個の窓を持つカレンダーで、1日ひとつずつ窓を開けていきます。よく売られているものには、チョコレートが入っています。レゴやプレイモービルのフィギュアが入っていて、24日にクリスマスバージョンが完成するというものもあります。クランツと同様、これもDIYする人が多くいます。この毎日ちょっとずつの作業は、子どもたちにとってはこのうえなく楽しいこと。幼稚園や学校でも、自分たちで作ったアドベントカレンダーを毎日順番で開けていくようです。

恒例のクリスマスクッキー作り

そして、アドベント中の恒例行事にクッキー作りがあります。「アドベントクッキー」「クリスマスクッキー」とも呼ばれますが、どの家庭もクッキーをせきを切ったかのように焼き始めるのがこの時期です。スタンダードなものが5種類ほどありますが、子どものいる家庭では、アイシングを使ってサンタや星の形のクッキーを焼いて可愛らしくデコレーションします。

みんなでほっこり、クリスマスマーケット 

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アドベントと並行して開催されるのが、クリスマスマーケット。きれいなクリスマスやツリーの飾り、工芸品や手袋などのウィンターグッズ、ドイツのクリスマスには欠かせないシュトレンやレープクーヘンなどのお菓子の屋台が並びます。子ども向けに大きなメリーゴーランドが設置してあったり、電動のミニ汽車が走ることも。聖歌隊の歌やクリスマスコンサートが開催されたり、サンタクロースが登場したりとイベントも多種用意されています。小さな街でもクリスマスマーケットは開催されており、こちらの方が雰囲気があって好きという方もいっぱいいらっしゃいます。
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この時期の風物詩として忘れてはならないのが、グリューワイン。赤ワインにレモンやオレンジの皮やスパイスと砂糖を加えて作ったホットワインです。これを寒い、寒い外でちびちびとすすりながら飲むのはまさに格別。マーケットのあちらこちらで、グリューワインを片手に談笑するグループの姿が見られます。お腹がすけば、グリルされたヴルスト(ドイツのソーセージ)を。本場は本当においしい! ので機会があればぜひお試しを。

クリスマスツリーは24日に登場 

街のあちこちで大きなクリスマスツリーが飾られますが、家庭では、24日のクリスマスイブの当日になり初めて飾るというのが伝統です。え?! それしか飾らないの? と驚く方もいるかも知れませんが、1月6日のHeilige Drei Koenige(三王来朝の日)まで飾っておくことになっています。ただ、今では12月前半にはツリーを飾る家庭の方が多いようです。

ちなみに、ドイツのクリスマスツリーは本物のもみやトウヒの生木を使います。アドベントの2週目ともなると、街のかしこにツリー販売所が仮設され、お目当ての大きさと形のツリーを買いにいきます。お値段は、サイズによりますが1本2千から4千円ぐらいが相場です。プラスチック製もありますが、ほとんどの家庭は本物の木を使用しており、それは“邪道でしょ”という空気すら……。

そして、生木なのでいつかは枯れます。最後のほうには、ちょっと動かすと針葉樹の細かい葉がバラバラと落ち、お母さんたちを困らせるというのも恒例。1月2週目の始め辺りには、“ツリー回収の日”が設けられ、ゴミ捨て場に置いておけば、ちゃんと市が回収してくれます。

家族と集うクリスマス

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そうして向かえるクリスマス。ドイツのクリスマスは、日本のようなパーティ色はなく、日本のお正月のような家族の集いの場です。クリスマス料理としては、カモ肉や七面鳥の料理が代表的です。ちなみに、日本でよく売られているクリスマスケーキなるものは、ドイツには存在しません。シュトレンや普段作っているケーキを持ち寄るスタイルです。食事の後は、家族でだんらんしたり、散歩に出たりと静かに過ごすのがドイツのクリスマスです。24日の夜にはベシェアルング(Bescherung)と言って、ようやくプレゼントの時間です。クリスマスツリーの下に置かれたプレゼントを子どもたちが次々と開け、クライマックスを迎えます。

ドイツでは、25日、26日は祝日です。そのため、この期間のどの日に母方、父方のどちらの実家で過ごすか、それとも今年は片方だけかなど、ちょっとした家族劇が繰り広げられるのも日本のお正月と似ているのではないでしょうか。

いかがでしたか? ドイツのクリスマスは、1年で1番大切な家族イベントです。クリスマスまでは慌しい時期ではありますが、ライトアップされる街と共に人々の顔もどことなくほがらかになります。みんなが同じ空気を共有できる貴重な時期でもあり、ドイツの人はそれを肌で感じて楽しんでいるのです。

ちなみに、ドイツでは25、26日と一切のお店、多くのレストランも閉店するため、街は静けさに包まれます。間違ってもこの時期に旅程を組まないように気をつけましょう!

 

著者プロフィール

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川嶋美紀子
フリーライター、トレンドウォッチャー。車の国ドイツで、約10年にわたり車業界のマーケット・カスタマーリサーチに従事。欧州の政治、経済、社会トレンドが専門。

 

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