フリーランサーが犬を飼うのは意外に大変?飼う前に知っておきたい5つのこと

フリーランサーが犬を飼うのは意外に大変?飼う前に知っておきたい5つのこと

自宅に居ることが多く、働く時間を自由に設定できるフリーランサーは犬を飼いやすいように思えますよね。会社員と比べて気晴らしの機会を自分で作らなくてはならないフリーランサーにとって、犬は良いパートナーだと言えます。

でも、ちょっとまってください。犬を飼うのは、実はそんなに簡単なことではないかもしれません。フリーランサーでドッグシッターの筆者が、犬を飼う前に見落としがちなポイントを紹介します。

1.  トレーニング・しつけは毎日マンツーマンで

犬を飼い始めると必要になるのが「トレーニング」や「しつけ」です。これらは犬に寄り添い、犬の行動に合わせてマンツーマンで行います。教えるのも叱るのもタイミングが大切ですから、いつも犬の行動を観察していなければなりません。

特にトイレのトレーニングは犬が家に来たその日、その瞬間からスタートします。トイレの正しい場所を決め、排尿・排便が成功したら盛大に誉める、失敗したらすぐに処理をする(臭いが残ってしまうと、そこがトイレだと思い込んでしまうため)。これを繰り返すことが必要で、自分からペットシーツに向かって排泄できるようになるまで1~2カ月はかかります。

スワレ、マテ、コイといったトレーニングも毎日、マンツーマンで犬のやる気を引き出しながら継続して行います。また、ブラッシング、耳の掃除、歯みがき、爪切りなどのボディケアも、最初からできるわけではありません。口や腹、尻などに触れられても抵抗しないように慣らす、ブラシを見せる、ブラシで触れる、といったように毎日、少しずつステップアップしながら、ボディケアを受け入れられるように育てていくのです。

こうしたトレーニングやしつけは、赤ちゃんや歩き始めた幼児を育てるのと同じです。それぞれの性格や個性に合わせて臨機応変に対応する必要があります。そしてトレーニングやしつけが充分にできないと問題行動が目立ち、人の社会で生活しにくい犬になってしまいます。

2.  「散歩は飼い主の健康にいい」と言うけれど

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犬を飼い始めれば毎日の散歩で運動不足が解消される、とつい期待してしまいますよね。どんなに運動嫌いでも愛犬に「散歩に連れて行って」とねだられたら重い腰もあがる。そう思いがちです。ですが、散歩はただ犬と一緒に外を歩けば良いわけではありません。

そもそも、子犬はすぐには散歩に行けません。少なくともワクチン接種が3回終わるまでは外へ出せません。犬の病気のなかには、子犬の時期に感染すると重症化したり死亡する率が非常に高いものがあります。最悪の場合、発症から2日以内に死亡してしまう恐ろしい病気も。したがって、ワクチンで予防を済ませるまでは、家の外に出すことができないのです。その間は、家の中で飼い主が相手をして、運動不足や遊び不足からくるストレス、肥満、筋力が発達しないなどのトラブルを解消してあげなければなりません。

また、子犬は、土、草、虫、風の音、車、人、散歩中の犬、子どもなど、ありとあらゆるものが気になって外を歩くことができないケースが多くあります。散歩も「外へ出る訓練」をして徐々に家の外の環境に慣らしていく必要があるのです。

さらに、アスファルトが焼けてしまう夏や、寒さが厳しい真冬は散歩に行かない方がいいこともあります。そんな時には、真夜中に散歩する、ドッグランへ出掛けるなどの工夫をしなければなりません。

散歩とは単に「外を歩くだけ」ではなく、犬の健康・安全を考えながら、遊ぶ・走るという犬の本能的欲求を満たすものです。自分一人で運動を行うよりも、よっぽど手間も時間もかかるでしょう。

3.  犬を飼うのに必要なお金は原稿用紙何枚分?

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犬を飼うには当然ながらお金がかかります。フリーランサーが一番心配なのはこの問題かもしれません。犬を飼い始めた最初の1年間に必要なお金を簡単に紹介しましょう。

  • 犬の購入費:300,000円
  • 飼うためのグッズ:30,000円
  • 畜犬登録:3,000円
  • 狂犬病予防接種  :4,000円
  • 混合ワクチン:20,000円
  • フィラリアなど予防薬:10,000円
  • ドッグフードやおやつ:60,000円
  • ペットシーツなどトイレ用品:15,000円
  • オモチャ類:10,000円

ざっくりとですが、こうした費用が掛かります。ほかにも、病院代(全額負担)、避妊や去勢手術費用(20,000~50,000円)、トリミング代(トイプードルの場合、年間10万円前後)、しつけ教室代などが発生することも。

シビアな話ではありますが、これだけ稼ぐのに原稿を何枚書けばいいのか、どれくらい仕事を増やす必要があるのか、一度考えてみてもいいかもしれません。

4.  犬の介護について考えたことはありますか?

人間と同じように、犬も長寿の時代となっています。一般社団法人ペットフード協会の調べによれば、犬の平均寿命は14.85年です。室内飼いの超小型犬(※)に限ると、平均寿命は15.67年です。ところが、犬は7歳くらいで老犬になります。平均寿命が15年と考えると、犬の寿命の半分以上は老犬期になりますね。

※超小型犬:成犬になっても体重が4kg前後でストップする小型犬チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなどのこと

老犬がかかりやすい病気

歯周病/肥満症/糖尿病/腎臓病/心臓病/認知症/角膜炎/緑内障/白内障/悪性腫瘍(いわゆるガン)など、老犬が掛かりやすい病気は数多くあります。

日常的な薬の投与や療養食といったケアに加えて、透析や輸液処置、ガン治療、手術など、高度な医療ケアも必要になってきます。これらは人と同じですね。ただ、人と違うのは医療費が飼い主の全額負担であることです。

手術には「手術前検査料・麻酔料・技術料・投薬料・入院費」などが含まれて20万円を超えるケースも少なくありません。ペットの保険サービスもありますが、高額な保険料に戸惑う飼い主も多いようです。

愛犬が年齢を重ねるにつれて、病気による時間・労力・費用といった飼い主の負担は重くなっていきます。

老犬の介護

犬も年を取ると体力が低下して、気力も落ちてきます。歯が抜けてしまうと固形物が食べられなくなりますし、病気の症状や後遺症で強い痛みを訴え、性格が変わることもあります。

こうした老犬には、人と同じように介護が必要になります。オムツをはかせ、寝床を整え、市販のドッグフードに手を加えて柔らかい介護食を作ったり、体力に合わせた運動や散歩をしたりすることになります。

認知症が進行して家中を徘徊したり、夜中に遠吠えをすることもあります。転落や屋外徘徊を防止するための安全対策、吠える声などで近所に迷惑をかけないような対策が必要になってきます。

先ほど述べたように、7歳以降が老犬期ですから、介護は数年間続くと考えておきましょう。

5.  フリーランサーは里親になれない可能性が!

犬を購入するとき、ペットショップやブリーダーから購入する以外に里親になる方法もあります。寄付金という名目だったり、ワクチン代の実費だけ請求されたりすることが多いため、数万円の負担で犬を家族に迎え入れることができる便利なシステムです。そして何より、捨てられてしまった犬の命を助けることができます。

ただ、友人から譲り受けたり、里親を募集している個人から引き取るのではなく、保健所や保護団体、保護犬カフェなどから引き取る場合、資格を満たした人でなければ里親になれないことがあります。また、里親になるための講習会を受ける義務があることも。

ここでは、「里親の応募資格」にどんな項目が設けられているのか、一例をあげてみます。

  • 家族構成(一人暮らしor家族有り、家族の年齢、妊婦がいるかどうか、アレルギーの有無)
  • 住環境(集合住宅or一戸建て、持ち家or賃貸、賃貸の場合はペットに関する規約の確認)
  • ペット飼養経験の有無
  • 里親経験の有無
  • 職業・年収・貯金

以上からわかるように、かなり踏み込んだ内容を確認され、一定以上の基準を満たさなければ「里親資格がない」と判断されてしまいます。一度捨てられた命・処分されそうになった命を確実に救いたい、という思いから、里親としてふさわしいかどうかを慎重に判断しているわけですが、フリーランサーにとってはクリアするのが難しい条件もあります。

特に「一人暮らし」「都心部の賃貸物件住まい」「収入が安定しない」「貯金がない」「車がない」といった人は、保証人を立てなければ引き取らせてもらえないケースがあります。これは飼い主が病気で入院したり、犬が病気になったりした時のケアが充分に行えるか、といった点を見られるからです。

こうした里親資格を見ると、「家に居る時間が会社員より長いからといって、犬を飼いやすいわけではない」と痛感するかもしれません。

犬という「家族」と一緒に暮らす喜び

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犬を飼う前に知っておきたい5つのポイントを見てきました。犬を飼うには「癒しを求める」だけでなく「育てる」という意識が必要不可欠です。自分中心に動いていた生活が、犬というパートナーにも時間を割く生活に変わります。この変化をどう受け止めるのか。そこが重要になります。

犬は飼い主に忠実で、しつけ・トレーニングをすればこの上なく頼もしいパートナーになり、一緒にいるだけで癒しになり、かけがえのない存在になります。フリーランサーであるからこそ犬のための時間を作ることができますし、犬とともに過ごす時間が仕事の気分転換になり、生活にリズムが生まれ、働く意義もできます。犬を飼うことは自分にとってプラスになることがたくさんあるのです。飼い方やケアについてよく考えて、新しい家族を迎えるようにしたいですね。

参考:

 

著者プロフィール

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須永智尋
元会社員。保活や小一の壁をきっかけにフリーランサーに転身。小動物看護士・小動物介護士・ドッグシッター・人工授精士(牛)という資格を活かして「ペットの飼養管理」、「妊娠・出産・育児」「女性の起業」がテーマの記事を作成している。夢はダルメシアンを飼うこと。

 

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