話題になっているから乗ってみた。これが本当のインタビューの極意(たぶん)

どうも。PENYA編集長の藤島です。

最近、メディア界隈の知人の間でプチ炎上していた「インタビューする際にやってはいけないこと」的な記事を読み、もやっと不思議な気持ちが湧いたので、筆を取ることにしました。

今回はタレントさんのインタビュー現場を想定し、インタビュアー歴15年のわたくしが現場で学んできた「インタビューの際にやるべきこと」をお届けします。


事前に相手のことを知りすぎるぐらい調べつくす

わたしをライターとして育ててくれたのは、とある雑誌のベテラン編集者のみなさんでした。「卵から育ててやろう」という大胆かつ大らかな気風の漂う編集部でした。

そして、“その日”は突然やってきました。キャップ(えらいひと)からの「インタビュー、やってみる?」のお声がけ……。まだ新米のこのわたしが!? 震えあがりましたが、もちろん「やらせていただきます!」と大音量で即答いたしました。(正確には、大学時代に同人誌の編集長をやっていたのでインタビューは未経験ではありませんでした)

その瞬間からインタビュー当日までやることといえば、下調べ。

たとえば対象者が俳優さんである場合は、彼の過去の出演作品すべてに目を通します。都内のレンタルショップを走り回り、DVDを借りまくります。徹夜になろうと、画面に食らいつき、重要なシーンや台詞をメモします。

彼がエッセイ本を出していたら、もちろん買って読みます。過去のインタビュー記事も集められるだけ集めて熟読します。(ちなみに大宅壮一文庫さんは過去の雑誌記事のコピーを送ってくれます。よく利用したものです)

そのうちに芸能界のスターさんもみずからブログを書く時代がきて、情報はさらに豊かになりました。ということで過去フィードをすべて読みます。インタビュー当日の朝の投稿なんかはとくに要チェック。ファンのみなさんに向かって、

「おはよ〜。これから現場に行ってきまーす!」

こんなご機嫌な投稿が朝食の写真と共にアップされていたりすれば、ひと安心。彼は心地よくお目覚めになり、インタビュー現場に向かっていることがわかるのですから。SNSは、インタビュアーにとってはありがたいツールです。

基礎知識がなければ会話は成立しない

新人の頃は、己の未熟さからできるだけ下調べをしましたが、それ以後に「ベテラン」と呼ばれる立場になってからも続けていました。なぜなら、対象者の情報が頭の中に入っていなければ、インタビュー(会話)は成立しないということを肌で感じてきたからです。

後になり、勝手に遠くから尊敬しているプロインタビュアーの吉田豪さんも“調べつくす”派だと知り、確信を強めました。

もし、相手のことを何も知らないでインタビューに挑んだら……?

例えば、彼が“僕のターニングポイント”について語りだしたとします。「○○の作品で▲▲役を演じたことが僕にとって大きくて……」と。そのとき、「○○の作品の▲▲役」を知らなかったら、一体どんなリアクションを取れるというのでしょう? 「ふぅ〜ん」とだけ言ってメモする? そこで終わりですね。だって知らないんだもん。掘り下げようがない。

事前の下調べで「○○の作品の▲▲役」を心得ていれば、「▲▲役のどのあたりに影響を受けたのですか? あの台詞ですか? それともあのシーン?」と食い下がることができます。そこから得られた情報はファン(読者)にとってはとても有益なものになります。

でもできれば、ここからもう一歩、踏み込みます。下調べ中に重要だと感じた他の作品を引き合いに出し、「例えば■■の作品のときはどうでしたか? わたしはあのシーンが非常に印象に残っていますが」と率直にお伝えします。すると「あ、確かに■■も……」と彼は思い出し、語ってくれます。この、“本人は気づいていなかったけど確かにね”を引き出すのが、インタビュアーのもっとも大切な仕事です。Most importantですYO!


こうして、彼の“無自覚の域”から引き出した言葉も織り交ぜて、記事を構成しましょう。読了後にファンのみなさんは記事内で話題にのぼった作品を見返して、「そうだったのか……!」と大好きなスターの内面に触れる素敵な瞬間を楽しんでくれることでしょう。

沈黙も利用してスクープを狙え!

インタビュアーに欠かせない「使命」があります。それは、スクープを狙うこと。ここでも下調べが活きてきます。他誌で語ったことのない話を、うちの誌面だけで語ってもらわなければなりません。これを持ち帰るのがインタビュアーの責務であり、スクープを提供できるのが“売れるメディア”たる理由です。

マネージャーさんに怒られない範囲で、ぐぐっと内面に迫りましょう。スクープといっても、別に熱愛関係の話に限りません(もちろんそれがマスト事項のときもありますが)。例えば、生い立ち、青春時代の話、撮影秘話、プライベートのこと……。過去にどの媒体でも語っていないが彼の核心部分ではないか? と当たりをつけて迫ります。

その際、しばし沈黙が生じるかもしれません。何せ彼にとっては語ったことがない領域なので、熟考の時間があって当然です。この沈黙に耐えられるかどうかも、インタビュアーの器が問われる瞬間です。待ちます。じっと待ちます。恐ろしく長く感じる時間ですが、辛抱強く待ちます。

やがて重い口が開かれ、ポツリ、ポツリと言葉が絞り出されてきたら、静かに耳を傾けましょう。上手く言葉にまとめられない様子だったら、「もしかしたらこういうことですか?」と思い当たる方向性をご提示いたしましょう。すると「あ、そうですそうです!」とヒントを得て、なめらかに語りだしてくれたら、全身全霊で受け止めます。絞り出してくれた言葉に余計な脚色を加えずに、なるべくそのまま誌面に起こします。これで、スクープ成立。

本当にマズいことを聞いてしまったら、マネージャーさんが飛んできて止めに入るので大丈夫です。ご本人が「その話はちょっと……」とお断りしてくることもあります。その場合は、「そうですね、やめておきましょう!」と爽やかに次の質問へと移りましょう。

録音機器に頼りまくる

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もともとわたしが心配性ということもありますが、録音機器には頼りまくっていました。

基本は2つ。かつてはSONYのテープレコーダーを愛用していました。テープがぐるぐると回りながら録音される様がインタビュアー中に確認できるので、安心だったのです。そして、もう1つはICレコーダー。

でも! この2つが同時に壊れるというまさかのハプニングが起こるかもしれない! そんなときのためにiPod touchも起動。いまはiPhoneにもボイスメモ機能があるから安心ですね。

なぜ録音機器に頼るのか? もちろんノートにメモも取りますが、わたしは、インタビュー中はできるだけお相手の顔が見たいのです。質問を受けたときの表情、目の動き、仕草……。すべてがヒントになるので、見逃したくありません。そういった変化も記事に織り交ぜられるかもしれないからです。

ちなみに、目を凝視しすぎるとプレッシャーを与えてしまうので、目のやや下か鼻を見るといい、とは業界で語り継がれるミニテクニックです。

テープ起こしはその日のうち、しかも一字一句を

ライターにとって、テープ起こしほどの苦行はありませんね。1度終えた取材をもう1度振り返る……。倍以上の時間を費やすことになります。でも、録れたてホヤホヤの音源ならまだ記憶に新しいので、滑らかに文字に起こしていくことができます。インタビューのテープ起こしは、当日中に済ませましょう。それも“ベタ起こし”です。

しかし、ここは意見が分かれるところかもしれません。「メモ書きがあるから、音を聞きながらメモを埋めれば十分だ」という発想もあるでしょうし、それで記事が書けるのなら別に良いと思います。

ただ、わたしの場合は“ベタ起こし”でした。インタビュー対象者の「あ〜」といった何気ない相づちや、咳払い、笑い声(その種類と長さ)、沈黙があれば「(ここで沈黙)」とメモ。一字一句をすべて文字に起こします。

当日のメモ書き、自分の記憶、テープ起こし。この3つを融合させて、インタビュー記事を執筆します。

インタビュアーが心得ておきたい豆知識

まだまだお伝えしきれない量のテクニックがあるのですが、今回はこの辺で。最後にちょっとした豆知識をまとめておきます。

1.清潔第一

華やかなインタビュー現場に小汚い格好で現れると嫌がられます。普通に考えてくださいよ。約1時間、不潔な人と会話をしたい人がいるでしょうか? 身ぎれいな格好で出向きましょう。

2.入りは早めに

まれに、道が空いていたりして、タレントさんが早く現場についてしまうことがあります。それもマネージャーさんよりも前に! そのような事態に備えて、なるべく早め……最低でも30分前には現場に入りましょう。

3.お座敷は掛け持ちしない

インタビューという“お座敷”に、インタビュアーもまた欠かせないタレントです。現場は、押したり巻いたりすることがあるので、時間が読めないもの。一日のうちに複数の座敷の予定を入れると、「前の現場が押して次に間に合わない!」などという、とんでもないアクシデントが生じます。アウトだ。完全にアウトだわ。

わたしは、大きなインタビューは1日に1件と決めていました。どうしても……という場合は「午前」と「夕方以降」という具合になるべく時間を開けていました。とにもかくにも“インタビュアーが現場にこない”というのは起こってはならない事件なので、掛け持ちする場合は慎重に。

わたしはインタビューを本業にしていたので、思わず長文となってしまいました。まだまだ書ききれていないことがたくさんあるので、インタビューの極意については、また機会を改めてお届けします。

 

著者プロフィール

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藤島由希
早稲田大学を卒業と同時にライターに。以後、フリーエディター、インタビュアーとして女性誌を中心に活動。これまでの執筆媒体は『anan』『Hanako』『GINZA』『BRUTUS』など。現在はWEBディレクターとして活動中。趣味、街歩き。好きな食べ物、おにぎり。

 

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